’90年代イタリアで流行した英国製ニット「ウィリアム ロッキー」の話。

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WILLIAM LOCKIE LAMBSWOOL カーディガン

ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」の秋冬バージョンをご紹介。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第32弾は……?

中村アーカイブ細バナー

【中村アーカイブ】 vol.32 /「ウィリアム ロッキー」のラムウールカーディガン

WILLIAM LOCKIE LAMBSWOOL カーディガン

’90年代後半頃に購入したカーディガンです。’90年代半ば頃になると、イタリアンクラシックの流れが日本にも徐々に入ってきて、様々なアイテムでイタリアのブランドが注目されるようになりました。その流れは’90年代後半に向かうとさらに加速し、今のように多くのイタリアブランドがメディアで取り上げられ、注目されるようになりました。

その頃、自身もピッティ・ウォモに行くようになり、フィレンツェやミラノのセレクトショップを丹念にリサーチする機会を得ました。しかしそこで目の当たりにしたのは、日本のメディアで取り上げられているようなイタリアのブランドは実はあまり見かけることがなく、英国ブランドの製品が多く扱われているということでした。

そんな状況の中、当時イタリアのセレクトショップで多く扱われていたWILLIAM LOCKIE(ウィリアム ロッキー)のニットが目に留まり、買い付けたのがこちらのカーディガンでした。

当時はイタリアのクラシックが大ブームになる直前の時期だったので、どんなにイタリアのセレクトショップで英国ブランドが多く扱われているという話をしたところで多勢に無勢、メディア的にもこれからイタリアのブランドを盛り上げていこうと言うときに余計なことを言うなという空気が漂っていました(苦笑)。

イタリア人が好むニットは2プライでしっかりと編まれたスコットランド製のニットだということを知ってもらうために買い付けましたが、当時イタリアンクラシックに傾倒し始めた人たちには、イタリアブランドのゆるく編まれた柔らかいニットの方がわかりやすく、結果的に従来の英国好きのお客様に購入していただくという結果になりました。

ただし、来日するイタリアの業界人たちからは英国ブランドを多く展開するBEAMSに対し、いわゆる“わかっている人たち” という評価をもらうことも多く、この後増えていくイタリアのサプライヤーとの取引にも良い影響を及ぼしたことは言うまでもありません。

このように、’90年代後半にイタリアのセレクトショップに影響されて買い付けたウィリアム ロッキーでしたが、実は’80年代後半頃からBEAMS FやRay BEAMSのオリジナルネームで’90年代中頃まで展開していたことをこの頃に知ることになります。

特に’80年代後半頃はスコットランド製の定番のラムズウールのニットが飛ぶように売れた時期なので、ウィリアム ロッキーとは知らずに毎シーズン何千枚もオーダーしていたことも何か深い縁があったのかなと今になって思います。

そして、ウィリアム ロッキーは現在BEAMS PLUSとのダブルネームで展開されています。’80年代から’90年代には私が買い付け、2000年代にBEAMS PLUSが展開を始め良い形でバトンタッチできたと思います。

特に私が指示したことではないですが、BEAMSの伝統が良い形で継承されていることを嬉しく思います。

ウィリアム ロッキーはジョンスメドレーと並びBEAMSの歴史を物語るニットブランドです。

この先このニットを着ることはないと思いますが、BEAMSにとっても大事なアーカイブとなるのは間違いないので、大切に保管していこうと思います。

2024

VOL.341

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