【2020年総括】今、スーツの価値を考える。「日常で味わえる特別」とは?

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日常で着られる最も特別な服、スーツ。

かねてから続いていたドレスウェアのカジュアル化。今年は誰も予期しなかったコロナ騒動により、その流れが一気に加速したといえる。混乱が終息したあとも、ライフスタイルの変化はそのまま残ることだろう。ここにきて、スーツという服の価値を改めて考える時期がやってきたといっていい。

ここぞという時のための格上げ服、ビジネスシーンに囚われず楽しむべき服など、スーツの新定義に対する見解は人によって様々だ。働き方、暮らし方、生き方の多様化が進んだ今となっては、一意に集約すること自体がナンセンスといえるだろう。そのうえで本誌が考えるスーツの定義とは、「日常で着られる最も特別な服」だ。

今、スーツの価値を考える

近代以降の服飾史を俯瞰すると、その流れは簡略化・カジュアル化の一途を辿ってきたといえる。欧州の貴族たちは華美な衣装からシンプルな洋服に着替え、フロックコートやテールコートといった現代に通じる服が登場。そして19世紀後半以降は本来室内着であった「ラウンジスーツ」が外出時の一般的な服装となっていった。これが今日スーツと呼ばれる服の原型となったことはご存じだろう。現代においては、それまで正礼装と定められていたテールコートがほとんど着用されなくなり、準礼装であるタキシードがその役割を果たすようになった。つまり略式の服が上位に「格上げ」されることが繰り返されてきたといえるだろう。そして今、スーツはまさにこの「格上げ」の最中にあるのだ。

その価値を味わうには今こそ最大の好機だ。

式典などでタキシードに身を包んだ時、誰もが高揚感を抱く。それはタキシードがもつ「特別な服」というパワーゆえだ。が、ただの宴席にタキシードを着て現れたら滑稽と思われるに違いない。それはタキシードが「非日常の服」にまで格上げされているからである。その意味において、スーツは特別性と日常性を兼ね備えた唯一の服であるということができるのだ。

今、スーツは過渡期にある。それがゆえ、「日常で味わえる特別」という今だけの楽しさがあるのだ。現在を生きる男として、それを満喫しないのは大層もったいない。そうは思わないだろうか?



[MEN’S EX 2020年12月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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