
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」の秋冬バージョンがスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第26弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.26 /ドレイクスのタータンチェック マフラー

’80年代後半から90年代前半に購入したものです。’80年代から’90年代中頃までメンズもウィメンズもタータンチェックのマフラーがかなりはやっていました。
当時は英国ブランドのリアルタータンのマフラーが主流で、ブラックウォッチ、ドレスゴードン、ドレススチュアート、ロイヤルスチュアートなど、定番のタータンチェックがとても人気でした。
そんな時、リアルタータンとは違う洗練された色柄のタータンチェックのマフラーがBEAMSに入荷してきました。それは当時すでにネクタイブランドとして世界的に有名だったDRAKE’S(ドレイクス)のマフラーでした。
当時すでにドレイクスのネクタイはBEAMS Fの主力ブランドでとても人気がありましたが、実はスタッフや顧客様の間では、他のブランドにはない洗練された色柄のマフラーもとても人気があり、毎シーズン早期に完売していました。
当時はイタリアやドイツなど英国以外のメーカーもリアルタータンではないチェックのマフラーを展開していましたが、派手すぎるものかやぼったい色柄のものが多く、ドレイクスのように洗練された色柄のものはあまりない時代でした。
実はドレイクスのデザイナーだったマイケル・ドレイクは、ドレイクスの前身であるHILL&DRAKE(ヒル&ドレイク)を1977年に立ち上げる前は、アクアスキュータムのアクセサリー・コレクションのデザイナーとしてスカーフやマフラーのデザインを手掛けていました。
そのような経緯もあり、当時のドレイクスはネクタイだけでなくスカーフやマフラーのコレクションも他のブランドにはない独特の世界観を持っていました。
BEAMSに入社後、カシミアのタータンチェックのマフラーを毎年買い足し、次に何を買おうかと思っていた時に出会ったのが、ドレイクスのタータンチェックのマフラーでした。
リアルタータンをベースにドレイクスの感性でアレンジを加えデザインされた新たなタータンチェックは、チェック好きの私にとってはとても魅力的でした。
英国ブランドのカシミア100%のマフラーが1万円台半ばくらいで買えた時代に、このドレイクスのマフラーはカシミア60%・ウール40%という混率で2万円以上するという、当時の私にとってはとても高価なものでした。
それでも他のブランドにはない洗練された色柄に魅せられ、毎年頑張って買い足していったことを今でもよく覚えています。
BEAMSでドレイクスのマフラーを扱い始めて30年以上たちますが、このマフラーはそのルーツとも言えるものです。私だけでなくBEAMSのアーカイブとしてこれからも大切に残していきたいマフラーです。