2020年7月1日、ナパ・ヴァレーに開業して10周年を迎えた「ケンゾー エステイト ワイナリー」。

この記念すべきアニバーサリーデイを迎えるにあたり、生涯に1ヴィンテージしか出せない特別なアニバーサリーワインが限定販売されることとなった。

このワインをリリースするにあたっては、オーナーである辻本憲三氏の特別な想いと、奇跡があった。 2017年に北カリフォルニアを襲った山火事は、ナパ一帯のワイナリーに多大なるダメージを与えたが、ケンゾーエステイトも例外ではなかった。「不安に駆られ、眠れる夜を重ねた後、ナパ一体の封鎖が解かれて真っ先にワイナリーに向かったとき、何事もなかったように整然と立ち並ぶ葡萄樹の姿がありました。艶やかな果実が、深く、深く、穏やかに、穏やかな表情で、私共を出迎えてくれたことを忘れられません。あのときは得も言えぬ感情が溢れ出し、思わず目頭が熱くなったことを、今も鮮明に覚えています」辻本氏はそう語る。

「すぐに畑へ歩み寄って、果実を摘み取り、そっと口に含んでみました。その果実の、なんと豊かな味わいだったことか。奇跡を感じました。収穫が中断され、一時は好機を逸するのではと案じられましたが、その中断が逆に功を奏し、偶然にも最高の収穫期を迎えたのです。陽光を浴びて蒼や紫に輝く果実は、どこかタンザナイトを思わせます。それは私の誕生石で『高貴』や『物事を好転させ、成功へと導く』という意味を持ちます。そうです。この果実は、特別なワインをつくるために授かったのです」

偶然の産物として誕生した奇跡の葡萄に感動した辻本氏は、この葡萄を使って新たな手法で特別なワインを作ることにした。まずは67もの区画から、それぞれ個性の異なる葡萄を収穫し、そこから21種類にも及ぶ原酒となる個性の異なるワインを、まずブレンド。その後、その21種類のワインをベースに、さらに絶妙なブレンドを繰り返し、大変な手間をかけて、ようやくこのワインの完成形が仕上がることとなった。

また通常は、新樽と旧樽を50％ずつ使い、18ヶ月間樽熟成させるところ、こちらの奇跡のワインは26ヶ月もの間、フレンチオークの旧樽100％で長期樽熟成を重ねたという。その結果、ニューヴィンテージでありながら、すでに独特の熟成感を持ち、まさに‟生涯に一度“しか出ない、特別なワインに相応しい一本に仕上がったのだ。

「こうして、深みある穏やかな味わいを持った、新たなワインが誕生しました。そのワインがもたらすのは安らぎ。複雑な状況下で、偶然にも私共に寄り添ってくれた果実を見つけた、あのときの心からの安堵感です。そんな心情から、私共は、このワインを『深穏』と命名しました。不安が独り歩きしてしまいがちな今だからこそ、特別な思いを宿したこのワイン『深穏』を、皆様と分かち合えれば幸いです。」（辻本氏）

ケンゾー エステイト「深穏2017」

色合い：鮮明なダークレッド

香り：セイボリー、ブラックベリーやヴァニラ、後にペッパーやシナモンなどのニュアンスが複層的に香る

味わい：深みのある果実の凝縮感、きめ細かいタンニンと熟成感が成すしなやかさと穏やかさが印象的

セパージュ：カベルネ・ソーヴィニョン90％、カベルネ・フラン７％、メルロ3％

アルコール：15.2％

販売価格：フルボトル（750ml）20,000円（税別）