ファッションディレクター 森岡 弘の「自分デザイン考個学」 Vol.12
ビジネスにおける装いは、相手に自分を知らせるコミュニケーションツール。毎月森岡 弘さんと企業を訪れ、職場や立場にあった自分に相応しい姿勢を考察する。今月は「弁護士」の装いに注目する。
話したのはこの2人

ファッションディレクター 森岡 弘さん
弊誌のビジネススタイルのご意見番。雑誌や広告のほか、政財界人のパーソナルスタイリングも多数手がける。
大江橋法律事務所
弁護士、ニューヨーク州弁護士
近藤直生さん(45)
1973年生まれ。’97年慶応義塾大学卒業。‘04年大江橋法律事務所入所。事業再生、国際法務等、国内外の案件に従事。
微差こそ大差のグレースーツ-弁護士の装い-

業務は主に会社法務や事業再生を担当し、企業からの依頼を受け、関係先との交渉などを行う。依頼者である企業のイメージや装いのトーンに合わせた服装を意識することも。その日の予定によって、スーツからジャケパンまで着分ける。シャツはブルーや柄のシャツも着ることがあるが、年齢とともに白シャツに落ち着いてきた。
「落ち着き」の楽しみ方
森岡さん 今回は、弁護士というお仕事における装いを見てみましょう。大江橋法律事務所の近藤さんをお訪ねしました。今日は宜しくお願いします。
近藤さん はい、宜しくお願いします。
森岡さん 弁護士というと、人や組織の間に入る立場で、難しい職業のイメージは拭えません。ですが、意外にも今日はジャケット&パンツ、ノータイでいらっしゃって、軽快な印象を受けました。
近藤さん はい。我々の仕事は、多くの場合カタイと思われがちで身構えられてしまうことも多いのですが、だからこそ、世の中のビジネスシーンとずれないようにいることも意識しています。
森岡さん なるほど。お仕事柄、シリアスなシーンが多いのでは、と想像しますが、そういうわけでもないと。
近藤さん 私は事業再生の案件を担当するので、企業が依頼者。前向きな事案の交渉の際は、オレンジや赤、黄色系など、明るい色のタイをすることもあります。交渉相手を刺激しないほうが良い場面では、控えめな色を選択。依頼者とともに関係者へ説明に行く際は、依頼者の装いのテンションに合わせることも考えます。また、対依頼人ではなく、依頼者の代理の立場で出ていくこともありますから、自分がどういう立場なのかを意識することはかなり重要です。
森岡さん TPOへの意識が、いっそう求められるお仕事ですね。
森岡さんの提案
配色はシンプルに、ディテールでさりげない変化を狙う