多くの個を束ね、組織を成功に導いている一流のトップには、どんな思考があるか?会社のマネジメントにも役立つ”ヒント”を加藤綾子さんがそっと探り、お届けする。
第16回 楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史さん[前編]
※最後に加藤綾子さんのスペシャルフォトギャラリー付き!
Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年よりフリーアナウンサーとなり、さらに活躍の場を広げている。現在は『ホンマでっか!? TV』(CX)、『世界へ発信! SNS英語術』(NHK)にレギュラー出演中。
三木谷浩史 Hiroshi Mikitani
1965年兵庫県生まれ。一橋大学商学部卒業後、日本興業銀行に入行。’93年にハーバード大学でMBAを取得。’97年にエム・ディー・エム(現・楽天)を設立し、代表取締役に就任。インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設した。ネット企業などが加盟する経済団体「新経済連盟」代表理事。
「あのときやっておけばよかったと後悔するのは最悪。絶対にやりたいと思ったことに対しては用意周到に準備して実行に移します」
(三木谷さん)
受け身ではなく、自立自走が必要な時代
加藤2019年2月7日で楽天は創立22周年を迎えたそうですね。おめでとうございます!
三木谷あれっ、そうでしたっけ。うっかりしていました。ありがとうございます。ずっと走り続けているから、そんなに時間が経ったという実感がなくて(笑)。会社の規模は大きくなっても、僕自身は何も変わっていないし、振り返るには時期尚早という心境ですね。
加藤まだまだ、ですか。
三木谷僕はいつまでもアントレプレナーでありたいと思っています。そこに山がある限り登り続ける、みたいな感じかな。
加藤終わりなき挑戦。
三木谷そんなに格好いいもんじゃありません(笑)。やらないで後悔するのは最悪だと思っているだけです。まあ、そうは言っても、現実的にすべてに手を出すことは難しいので、優先順位を見極めて、やると決めたことに対してはなるべく用意周到に準備し、実行に移すようにしています。時には社内の公用語を英語にしたように気合が先行するパターンもありますが。
加藤皆さん、当初、英語には面食らったでしょうね。
三木谷だと思います。でも8年経ち、まったく英語を話せなかった社員が海外赴任を希望するまでになりました。やはり、視野は広がりますよね。特にインターネットの世界はボーダレスなので、国内だけでなく、海外を意識しないことにはいい仕事はできません。ちなみに、我が楽天モバイルネットワークのプロジェクトに関わるエンジニアは大半が外国人ですから!
加藤まあ!日本人では難しいということでしょうか。
三木谷日本人の能力が際立つ分野ももちろんあります。しかし、ソフトウェアの領域においては残念ながら日本は後手に回っている。何しろ日本で情報工学を専攻した卒業生の数は、アメリカでは数倍、中国やインドでは何十倍もいるんですから。そうなると、どこから雇い入れるのが効率的か。答えは自ずと明らかでしょう。
加藤このままだと日本は戦っていけませんね。一体、どうすればいいでしょう。
三木谷海外の人材を活用すればいいんですよ。僕は新経済連盟という経済団体を立ち上げて外国人受け入れの規制緩和を推進し、世界に先駆けた通信ネットワークを作ろうとしていますが、その過程で実感しています。安全で、彼らに対して親和的な日本は異常に人気があると。特に東京。東京で働いてみたい、暮らしてみたいという人は本当に多い。世間には外国人が流入すると日本の文化が崩れるという考えもあるようですが、僕自身はそれに対して懐疑的で、むしろ日本固有の強い文化が彼らによって宣伝されるだろうと思っています。
加藤やはり日本には島国的な発想が根強いんでしょうか(笑)。
三木谷かもしれませんね。僭越ながら、僕は「楽天」を通じて、日本の企業がこれから目指すべき企業像を提案しようとしています。それを見越して、英語化や外国籍社員の登用を行ってきました。こういう企業が増えれば日本は変わる。そう確信しています。