木型=ラストは靴の生命線。いくら素材や仕立てにこだわっていても、ラストが凡庸では決して”名靴”とは呼ばれない。そこでここでは、本誌頻出の名靴たちが採用するラストを、ジャンルごとにご紹介。ここから各ブランドの靴作りに対する思想や美学を読み取ってほしい。
FILE.1 時代を作った大スタンダード
全体的に細身のシェイプで、尖りすぎず、ぽってりしすぎない均整の取れたトウ。
今どきドレスシューズの本流とも言えるモダンスタンダードな傑作木型を集めてみた。
エドワード グリーンの82
英国ラウンドトウの新たなベンチマークに君臨
2004年登場。同社久々の新作ラウンドトウ木型、しかもそれがロングノーズだったことも当時大きな話題となり、各社のドレス靴の形に影響を与えた。控えめにして華のある名木型だ。
クロケット&ジョーンズの337
英国靴に仏の洗練を加えた”パリラスト”
パリ直営店にてビスポーク用木型をもとに開発。細身&セミスクエアトウでシャープ感を強めているが、甲が高めで踵が小さい日本人の足にも合う。
ジョン ロブの7000
クラシックながらも優美な気品が漂う
現在のジョン ロブの主力木型。ロングノーズで小ぶりのラウンドトウ、そしてキュッと絞られたウエストを特徴とし、既製のグッドイヤー靴でありながら注文靴のようなエレガンスと色気を感じさせる。
チャーチの173
クラシックながらフィットは現代的
程よくボリューム感があり、ヒールカップも大きめという英国ドレス靴の王道シェイプ。とはいえ現代人の足型に合うよう細部のバランスはしっかり煮詰められている。
LAST Column
殿堂ラストには前身もあった「173の前身 73」
ラスト「73」は、チャーチの定番モデルに多用されたセミスクエアの名作木型。今日的な目で見るとノーズが短めで、ポッテリ感も強い。そこで近年、生まれたのが「173」。丸みはそのまま、現代的なバランスに仕立て直しているのだ。
[MEN’S EX2018年02月号の記事を再構成]
撮影/平井敬治、宇田川 淳、植野 淳、村上 健、岡田ナツ子、武蔵俊介、久保田彩子 スタイリング/武内雅英(CODE) ヘアメイク/勝間亮平(MASCULIN) 構成・文/POW-DER 文/竹石安宏、吉田 巌(十万馬力)、山田純貴、安岡将文、間中美希子、秦 大輔 撮影協力/モルテーニ東京