生地を「タグの知名度」よりも”質”で見極めることができたなら、服選びはもっと楽しくなる——。生地の個性からスタイルを導く新発想で、自分に本当に合う”ネクスタイル”、探しませんか。
「原毛から染める」ことでしか、表現できない美しさ
「ハッ」と目を惹く、美しさの理由とは
生地を一目見て、理屈抜きに綺麗だなぁと感じたことはないだろうか。美しい色に定義はないが、それでも洋服には、「思わず手にとりたくなる」色彩が存在する。
そんな直感に訴える技法のひとつが、原毛の段階で染める「トップ染め」。製品を染めるものと比べ、織糸の微妙なグラデーションが美麗な奥行きを生む。
伊・ビエラを本拠とするトレーニョ1900は、そのトップ染めの美しさに定評のある生地メーカー。ニット糸の生産・販売も行い、多彩な色糸を自社生産するなど、業界内での評価は高い。
今回フォーカスするのは、スラブタッチの凹凸を、規則性をもった織りで表現した変わり種の生地(この技術も圧巻!)。これが前述の美発色と相まって、実に豊かな表情を湛える。いつもよりもつい、スタイルに遊びを入れたくなる・・・。そんな誘惑を秘めた生地でもある。
TOLLEGNO 1900(トレーニョ1900)のスラブ調ウール
タイドアップからデニムまでなじむ、程よい素材感
糸の目を飛ばして織ることでスラブの節感を表現した、ファンシーで華やかな生地。もとはジャケット用に開発され、自然な素材感があるのでタイドアップからカジュアル、上下のセパレート使いまで幅広く着回せる。目付220gと軽量だが、コシがあり仕立て映えも◎。
COMPANY PROFILE
オーセンティックな梳毛生地作りで知られる老舗だが、最近はファンシーな生地も精力的にラインナップ。モダンに生まれ変わった、ビエラを本拠とする大手一貫製織メーカー。創業は1900年。ニット糸の名門としても有名。
堅実なモノ作りの中に光る色彩美
ドレスでは珍しい色彩もトップ染めで美しく表現
グリーンやパープルは、ウール100%の生地ではかなり珍しい色味。サックス×ホワイトも然りだが、特筆すべきはその奥行きのある美発色。トップ染めならではの強みが、色合いに遺憾なく発揮されている。紬のような凹凸が、そこへ一層豊かな表情を与えている点も見逃せない。
美しさの理由
ニット業界で蓄えたトップ染めのノウハウ
糸に紡がれる前の、毛を束ねた状態で行う染色(写真上)が”トップ染め”。後染めよりも発色が良く褪せにも強いが、自社で染めるには糸の在庫を抱えられる企業体力と技術が必要。トップ染めの糸を豊富に揃えられるのは、近代的かつ大規模な工場を持ち、ニット糸のサプライヤーでもあるトレーニョ1900の強みだ。
トレーニョ1900 CEO
ジョバンニ・ゲルマネッティ氏
提案力を高めるべく、生産体制を革新しています
「歴史と伝統のある弊社は堅実な生地作りが強み。私の代になってからは、各界の著名デザイナーと意見交換をし、魅力的なトレンド提案ができるよう、生産体制を改革しました。最近はストレッチなどの機能素材にも力を入れています」
お問い合わせ先
トレーニョ1900のブランドに関するお問い合わせ/
ケイズクリエイション TEL:06-6776-2300
製品に関するお問い合わせ/
伊勢丹新宿店 TEL:03-3352-1111(大代表)
[MEN’S EX 2017年9月号の記事を再構成]
撮影/若林武志 スタイリング/四方章敬 文/秦 大輔