大人の言い訳は、相手への誠意でありやさしさであり愛です。何かとややこしくてままならない大人の日々ですが、適切な言い訳を繰り出して、自分を守りつつ周囲のストレスをできるだけ少なくしてしまいましょう。
講師
石原 壮一郎さん
1963年三重県生まれ。大人の美しさと可能性を追求するコラムニスト。1993年に『大人養成講座』でデビュー以来、日本の大人シーンを牽引している。近著に『本当に必要とされる最強マナー』『9割の会社はバカ』など。
美人部下のアプローチをかわす
己のふがいなさを全力で責めた上で、思いっ切り悔しがる
ある日、美人部下が思いつめた様子で「ちょっとご相談が……」と言ってきました。あくまで上司として仕事帰りに食事に行ったら、おっとビックリ。潤んだ目で「ふたりっきりになりたい」的なことを言い出しました。
自分に限ってそんな状況は絶対にないと思ったとしても、あきらめや油断は禁物です。人間、どこでどうモテるかわかりません。
嬉しい展開ですけど、こっちは妻子がある身だし、このご時世です。うっかり据え膳を食べたら、家庭的にも会社的にも恐ろしいことになるのは明らか。同時に、断わり方を間違えたら、それはそれで怒りや恨みを買ってしまうでしょう。まさに絶体絶命です。
モテたからと調子に乗って、したり顔で「気持ちは嬉しいけど、もっと自分を大事にしなさい」なんてイイ男ぶるのは最悪。相手に恥をかかせることになり、厄介な報復を招きかねません。
ここは己のふがいなさを全力で責めるのが、もっとも安全な言い訳。ご期待に沿えないのは、あくまで自分の側の問題という流れにしてしまうのがポイントです。
まずは、大げさに頭を掻きむしりながら、こう叫びましょう。 「ああ、俺はなんてふがいない人間なんだ。こんなときに家族や会社のことを考えてしまうなんて、見下げ果てたクソ野郎だ!」
ヘタに謝ると、こっちが優位に立っている構図になって、相手は屈辱感を覚えるかも。目を合わせないまま頭を抱えて、ひとり相撲の苦悩を続けましょう。
ひとしきり自分を責めたら、目をそらしたまま、握りこぶしを作った手を震わせながら、 「ああ、悔しい!俺は悔しい!男として本当に情けない……」と声を振り絞ります
ここまでやれば、相手は誘いを断わられてプライドが傷つくより先に、「この人、大丈夫かな?」と心配になって、さっきまでの据え膳モードをなかったことにしてくれるはず。しかも、二度とそういう気を起こさないでしょう。
痛みや犠牲を伴う作戦ですが、大切な何かを守るためなので、致し方ありません。いつの日か、実際に役に立つといいですね。
言い訳の極意
ひたすら自分を責めることで、 断わられた相手のショックを 吹き飛ばす——。 言い訳は自分も相手も 守ることができる
[MEN’S EX 2019年3月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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