近頃、エグゼクティブの間でますます話題のアート。知識を広げ、ビジネス会話を広げるためには、アートの「用語」にも精通しておきたい。
今月の用語 “アングラ” 【ビジネス”ART”会話#8】
“アングラ”
1968年に「アングラ」といわれた芸術が、50年後の今、蘇る
「1968年」がどんな年だったか覚えているだろうか? ザ・タイガースが『花の首飾り』を歌い、『巨人の星』のアニメ放送が始まり、星飛雄馬の父親がちゃぶ台をひっくり返していた時代といえばイメージが湧くだろうか? 文化面ではアメリカからベトナム戦争に反対する音楽やアートが輸入され、国内では学生運動が盛り上がると同時に、「アングラ」といわれるユニークな芸術活動が生まれた。
「アングラ」はアンダーグラウンドの略語で、「地下に潜った」「反体制の」という意味。美術館を飛び出してゲリラ的にストリートでパフォーマンスをする美術家集団、新宿の公園にテントを張って芝居をする劇団など、あるべき場所から外れた表現者たちを「アングラ」と言った。作品には反戦・反米など政治的なメッセージが色濃く描かれ、政権に正面から異議申し立てをするパフォーマンスは度々騒乱を引き起こした。「アングラとは芸術半分、風俗文化半分。お高くとまった芸術でなく、ちょっとハメを外したような芸術」と企画した水沼啓和氏はいう。その言葉通り、本展では美術、演劇、舞踏、映画、建築、デザイン、漫画などの作品や資料も多数展示され、伝説のディスコMUGENのサイケデリックなライトショーも再現。1968年初演のパフォーマンスの再演、映画上映などのイベントもある。若者たちが意見を主張し、理想に燃えていた時代の空気も、ぜひ一緒に感じてほしい。
伝説のディスコ「MUGEN」のライトショーが復活!
1968年にオープンした「MUGEN」は、三島由紀夫、川端康成、澁澤龍彦、横尾忠則といった、文学、美術、デザインなど、各界の有名人や新しもの好きが夜ごと通った伝説のディスコ。本展ではプロデューサーの浜野安宏氏、ライトショーを手掛けていた照明デザイナーの藤本晴美氏の協力で、当時のサイケデリックなショーをデジタル化して再現する。BGMには、’60年代のロックやソウルを、新たにリミックスしたものを流すとのこと。1968年にプレイバックして踊ってみては?
若かりし横尾忠則がアングラ芸術家たちと共演した幻の映画で1968年を感じとれ!
1968年当時、グラフィックデザイナーとして世界的な評価も高かった横尾忠則。自身が主演した、大島 渚監督の映画『新宿泥棒日記』のポスターも手がけている。映画には唐十郎、麿赤兒、新宿の紀伊國屋書店の社長らが実名で出演。本展では上映会もあり。
戦後の社会問題を描いた純粋芸術家、山下菊二を知らずして日本現代美術を語るべからず!
本展では1968年に開催されたベトナム戦争に反対する現代美術のグループ展「戦争と解放」に山下が出品した油彩が展示される。アメリカの国旗がグロテスクに歪む。戦後を代表するシュールレアリズム作家、山下の絵画に込められたメッセージが感じられる。
DATA
「1968年 激動の時代の芸術」 会期:開催中〜 11月11日 会場:千葉市美術館(千葉市中央区中央3-10-8) 開館時間:10時〜18時(金・土曜日は20時まで。入場は閉館の30分前まで) 休館日:10/1(月)、11/5(月) 料金:一般1200円ほか お問い合わせ:千葉市美術館 TEL:043-221-2311
※表示価格は税抜き
[MEN’SEX2018年11月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)