石原壮一郎「大人の言い訳講座#2」新人君にウソを教えてしまった

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大人の言い訳は、相手への誠意であり優しさであり愛です。何かとややこしくてままならない大人の日々ですが、適切な言い訳を繰り出して、自分を守りつつ周囲のストレスをできるだけ少なくしてしまいましょう。

新人と上司

石原 壮一郎さん

講師
石原 壮一郎さん

1963年三重県生まれ。大人の美しさと可能性を追求するコラムニスト。1993年に『大人養成講座』でデビュー以来、日本の大人シーンを牽引している。最新刊は、悩みがスッキリなくなる『大人の人間関係』(日本文芸社)。

「この人は信用できる」と思わせる展開を目指そう

今日も世の中には、言い訳があふれています。もともと自分に落ち度があるから言い訳を繰り出すわけですが、繰り出し方を間違えると命取りになりかねません。
この時期、新人に仕事のやり方や社内のルールを教えることは、よくあります。

「いいか、会議室を予約するときは、まず予約ボードに部署と名前を書いて…」

そんな調子で新人君に教えたのはいいけど、じつは大間違い。最初に予約ノートに書き込む必要があったため、後日、彼から

「総務の人に、そうじゃないよって注意されました」

と、ちょっと恨みがましく言われてしまいました。
完全に自分の勘違いです。ただ、この場面で、

「細かいこと気にするな!」

「間違いは誰にでもある!」

などと開き直ったら、その新人君は「うわ、この人、ダメな人だった」と即座に見切りをつけるでしょう。
ここで大切なのは些細でマヌケな間違いを巧みに言い訳することによってマイナスをプラスに転じること。

「それは申し訳なかった。愚かな俺を許してくれ!」

と、まずは必要以上に大げさに謝ります。その際に「予約ボードと予約ノートって、紛らわしいよな」と言ってしまうのは、器の小ささを感じさせてしまう最悪の言い訳。

「しまった。俺が入社した頃はボードだったんだよな」

そう言って遠回しにキャリアの長さを感じさせるのが、無駄に株を下げないギリギリの言い訳です。その上で、

「おかげで、俺も自分の間違った知識をアップデートできたよ。ありがとう」

という流れでお礼を言ってしまいましょう。

新人君は、こちらの意外な反応に驚きつつ、「この人は信用できる」「こんな上司(先輩)になりたい」と思ってくれるに違いありません。
言い訳は自分との闘いです。ごまかしてプライドを保つという目先の甘い誘惑に負けず、全力で踏ん張ることによって、最大限の成果を獲得してしまいましょう。


言い訳の極意

ひとつ間違えば軽蔑される状況を乗り越えて、信頼や尊敬を獲得してしまう——。
言い訳は時にそんな鮮やかな力技を見せてくれる。




[MEN’S EX2018年5月号の記事を再構成]
イラスト/千野エー

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