
加藤ちなみに、ビジョンを持ってプロジェクトを進めているときに、これは失敗しちゃったな、ってご経験はあるんでしょうか?
川淵あるある。でも、Jリーグのチェアマンを退くときに、マスコミに「川淵さん、何が一番の失敗でしたか?」と聞かれて、「失敗なんかないよ」と答えました。
加藤どういう意図で?
川淵紆余曲折しながら物事に取り組んでいれば失敗はつきもの。でも、その失敗をどうやって活かすかを考えれば、それはすでに失敗じゃなくなる。
加藤なるほど。
川淵さっきも話題にしたフリューゲルスとマリノスの一件も、Jクラブから撤退したいと考えていた他の企業の抑止力になったのは間違いないし、しかも、サポーターたちの熱意で新たに横浜FCが誕生した。だから、何が失敗なんだと。マスコミはひどく不満そうな顔をしていたけどね(笑)。
加藤アハハ。最後に、川淵さんのプライベートについても少し伺わせてください。今年の12月には82歳になられますが、健康の秘訣は?
川淵娘の助言をちゃんと聞いて、毎日、つま先立ちを50回やることかな。第2の心臓と言われているふくらはぎを鍛えるわけね。おかげで、この歳でも靴下を片足立ちで履けますよ。
加藤素晴らしいですね。ところで、川淵さんのお召しになる服は奥様のお見立てですか?
川淵大体そう。今日は加藤さんと対談するんだって言ったら、紺を着る人の方が多いだろうから、あなたはグレーのスーツにしなさい、って。数はないんだけど、Jリーグのチェアマン時代によくテレビに映っていたせいか、ある人に「川淵さん、この前と同じタイをしてますね」と言われて、焦っていろいろ揃えたっけ(笑)。ちなみに、今日のタイは日本サッカー協会のオフィシャルもの。これを締めとけば無難だからさ。
加藤今のサッカー選手って、お洒落に気を遣う方が多いですよね。
川淵そういえば、昔、とある表彰式でサッカーの選手と野球の選手が並んでいて、ファッション感覚がずいぶん違うなと思ったことがありました。でも、これは内緒に。また炎上しちゃうから(笑)。

カトMEMO
- 常にビジョンを明確にし、改革に向けて闘う強さを持っている
- トップは動揺を見せてはならない
- “気にしない”ことも大切で、批判はプラスに変える
- 失敗を失敗と捉えず、上手く消化してその後に生かす