スーツ姿でも、どこか西郷吉之助、後の西郷隆盛の面影を感じさせる。「そうですか。自分としては一生懸命やっているので、そうなっていれば嬉しいです」と笑うのは、2018年の大河ドラマ『西郷(せご)どん』に主演する鈴木亮平さん。気負わず、しかし着実に進化を遂げている、ライジングジェネレーションの言葉が頼もしい。
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真っ直ぐで、涙もろく、繊細。そんな西郷を演じるために
——徹底した役作りがしばしば話題にのぼる鈴木亮平さん。今回は事前にどんな準備を?
鈴木:肉体的なこともあるんですが、今回は若き日の西郷さんを描くということで、自分なりに資料を読みましたし、ストーリーのキーとなる奄美や沖永良部などの離島も含め、撮影前に一人で九州を回って、西郷さんが見ていた風景と接してきたことが役に立っていますね。
——大河ドラマ『西郷どん』は、今までにない西郷像を描くのだとか?
鈴木:西郷さんのプライベートな部分にも光を当てていくんですが、資料や手紙でも人物像がよくわかっておらず、彼の人間臭い部分は今まであまり描かれてこなかったそうなんです。西郷さんというと、みなさん坂本龍馬さんと出会って以降のことぐらいしか知らないかと思うんですが、それまでにすごく興味深い人生があります。入水自殺しようとして奇跡的に生き延びたり、結婚も三度していますし。二度の離島生活も経験していて、一度めは安政の大獄で幕府から追われて身を隠し、二度めは薩摩のお殿様を怒らせて島流しにあっています。そんな様々な経験があった上で、明治の直前に歴史の表舞台に出てくる。そこまでを描くんです。僕もそんな西郷さんを知らなかったので、発見の連続です。
——そんな人間・西郷の魅力は?
鈴木:一言で言うと、真っ直ぐで情に厚い男というところだと思います。とにかく考えるより先に行動する。僕もそうありたいと思っていても、リスクや傷つくことを恐れてしまって、動かないことが多々ありましたから、西郷さんの実行力は本当に羨ましいです。動かなければ見えてこない世界があって、動かなければ出会わない人がたくさんいて、それが後々西郷さんの財産になっていく。無鉄砲でもいいから当たってみることの大切さは、今の社会でも変わらないと思います。それから、目の前にいる人の痛みを、自分の痛みのように感じてしまう共感力も魅力だと思います。そのおかげで、安請け合いしてしまったり、危ない目にあったりするんですが、共感力があったからこそ、例えば無血開城の交渉で勝海舟さんと相対して、相手の苦しい立場や心情を理解しながら、こちらとの折り合いをつける話し合いができたんじゃないかと思うんです。今、前半を撮っているところで、汗にまみれて走っているようなシーンが多いんですが、強いどっしりとした武士というイメージではなくて、よく泣きますし、繊細な男でもあるんです。まだ未熟な西郷さんがそこにいる。そこからどんな人間力を持った人物に成長していくのか、ワクワクしています。