家具研究科、織田憲嗣さんと考えた本物の家具の条件

bool(false)

本物を持つことで生まれる豊かさ
「美しい家具」と暮らす

暮らしの中の美は人を幸せにする――たとえ、どんなに値が張ろうとも、いい家具にはそれを補って余りある豊かさがある。生活の基盤となる家具は、決して間に合わせのものではなく、長く愛着を持って使うことができる“本物”をじっくりと吟味して選びたい。人生を豊かにする家具選びの極意と家具を愛する暮らしを紹介しよう。

「家具は一生ものというけれど、とんでもない。二生もの、三生ものなのです」 ── 織田憲嗣

織田邸
雪景色に包まれた北海道の織田邸は「家具のために作った森の中の家」。

織田憲嗣(おだ・のりつぐ)
1946年高知県生まれ。大阪芸術大学卒業。髙島屋大阪支店宣伝部勤務の後、フリーランスのグラフィックデザイナー、イラストレーターとなる。1994年から北海道東海大学芸術工学部教授。2015年東海大学名誉教授に就任。1997年デンマーク家具賞受賞、2015年第1回ハンス・J・ウェグナー賞受賞。『ハンス・ウェグナーの椅子100』など著書多数。

[家具研究家]織田憲嗣さんと考えた
本物の家具の条件

本物とは、時を経て色褪せないもの。長く美しく、愛着を持って使える家具の要件を、家具の達人、織田憲嗣さんと考えた。

1.ロングセラー
~25年以上、商品化されていること~

ロングセラーは、生活者が長年、支持をし続けたという意味において、価値が証明されている。販売、製造のサイクルが確立し、修理や買い足しができるなど、ある意味、社会が保証している商品ともいえる。「10年では短い。25年、つまり四半世紀以上商品化され続けることが本物の条件」。

2.サスティナブル
~丈夫かつ修理ができること~

生活道具として構造的に丈夫であることは当然のこと。しかし、数十年というスパンで考えたとき「修理できるか」ということが大切になってきている。また、世界的なSDGsの潮流を踏まえ「環境に配慮した素材を使うこと」はもはや絶対条件になっている。

3.タイムレス
~時を経て輝きを増す~

家具の寿命の要件は、(1)素材、(2)構造、(3)機能、(4)デザインの4つが考えられる。これに加えて、作り手の情熱によって生まれたものを、生活者が愛着を持ってロングライフに使うことが大切。本物は経年変化により、使い込むほどに味わいと価値を増していく。

4.オリジナリティ
~作家性を重んじる~

愛用者として、家具のデザイナーや職人の創造に対して敬意を払うことは満足感に直結する。イミテーションやコピー商品では、作り手の誇りや、胸が熱くなるような高揚感は感じられない。きちんとしたブランドのきちんとした作家の家具は、二次市場で評価され、受け継ぐことができるのだ。


織田邸の椅子の中でも傑作中の傑作4点。すべて北欧モダン黄金期のデザイナーによるもの。椅子通の間では「ハンス・ウェグナーのベアチェアに掛けて、フィン・ユールのNo.45をながめることが究極の至福の時」といわれる。

ベアチェアとコロニアルチェア

左・Bear Chaiar(ベアチェア)
1950年にハンス・ウェグナーがデザインした通称「パパベア」。「5年ほど前、家内が選んだものをプレゼント。掛け心地はこれに勝るものはありません」。PP モブラー社製。現行品はスカンジナビアン・リビング扱い。

右・Colonial Chair(コロニアルチェア)
1949年、デンマークの巨匠オーレ・ヴァンシャーによるデザイン。「1983年頃にデンマークで購入。ワシントン条約により、今は使えないブラジリアン・ローズウッドを使用したもので、光沢が美しい」。現行品はカール・ハンセン& サン 東京本店扱い。

PK9とイージーチェアNo.45

左・PK9(PK9)
ポール・ケアホルムの3本脚の名作ダイニングチェア。「弾力性に富み、3次元曲面の座がお尻にフィット。ちょっと小ぶりなのがいい」。脚は初期のスチールからステンレスに変更されている。現行品はフリッツ・ハンセン 東京扱い。

右・Easy Chair No.45(イージーチェアNo.45)
1945年デザインのフィン・ユールの代表作。“世界で最も美しい肘を持つ椅子”といわれる。「1980年代初頭、今は閉鎖されてしまった有名な『デンパルマネンテ』のデッド・ストックを購入」。

一覧はコチラ: 「美しい家具」と暮らす



[MEN’S EX Spring 2025の記事を再構成]

2025

VOL.345

Spring

  1. 1
SmartNews
ビジネスの装いルール完全BOOK
  • Facebook
  • X
  • Instagram
  • YouTube
  • Facebook
  • X
  • Instagram
  • YouTube
pagetop