ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第47弾は……?
【中村アーカイブ】 vol.47 / カムコのBDUジャケット
’90年代半ば頃に購入しました。自分にとってミリタリージャケットの定番は、フレンチアイビーのマストアイテムだったM‐65。’80年代から’90年代前半頃まではよく着ていましたが、その後はフレンチアイビーの流れが収まっていくにつれて出番も少なくなっていました。
それでもマルチポケットのミリタリージャケットは羽織るだけでそれなりにサマになるので、M‐65に変わるものが何かないかと思っていた時に、BEAMSの原宿店に入荷してきたのが、このBDUジャケットでした。
春夏に軽く羽織れるカジュアルなジャケットを探していたので、コットンのリップストップの生地で作られたこのジャケットは、自分のイメージどおりでした。色もミリタリーグリーンではなくネイビーなのでラギッド感がなく、値段が手頃だったこともあり、なにも迷わずに購入しました。
当時カジュアルのスタッフはこのジャケットにグラミチのパンツを合わせ、靴はクラークスのワラビーというコーディネートが流行っていましたが、さすがに自分のテイストではなかったので、チェックのボタンダウンやラコステのポロシャツの上に羽織り、ファイブポケットのパンツにローファーを合わせてよく着ていました。
買ってしばらくは休日によく着ていたのですが、なんとなくしっくりこなくて、結局は2年くらいでクローゼットに眠ることになりました。
痩せていて、なで肩で首が長い私が、肩幅が広く身幅も袖幅も太いミリタリージャケットを着るとどうしても野暮ったくあか抜けない感じに見え、うまく着こなせなかったのが理由です。
それでもいつか着こなせる日が来るかなと思い、断捨離せずにずっと所有してきました。
この年になれば着こなせるかなと、先日屋根裏のアーカイブ収納庫から取り出し、今ならカジュアルに着るのではなくミックススタイルだと思い、テーラードジャケットの上に羽織ってみましたが、やはり似合いませんでした(苦笑)。
昨今ミリタリーブームでBEAMSのスタッフもテーラードとミリタリーのミックススタイルを良く見かけるものの、正直似合っているスタッフは少ないと思っていましたが、私がその代表的な一人ということが改めてわかりました(笑)。
ちなみに、このミリタリージャケットを詳しいスタッフに見せたところ、レプリカではあるもののコットン100%のリップストップのネイビーは珍しいらしく、ミリタリー好きの人に譲ろうかなとも思いましたが、そんな話を聞くと手放せなくなり、結局アーカイブとして残していくことにしました(笑)。
やはり、自分はM‐65以外のリアルミリタリージャケットは似合わないと再認識させられたBDUジャケット、60歳を超えたら、またチャレンジしてみたいと思います。