ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第42弾は……?
【中村アーカイブ】 vol.42 / パラブーツのミカエル
1990年代前半頃に購入しました。私がBEAMSに入社した1985年頃には既にチロリアンシューズのブームがあり、オリジナルで作った日本製のチロリアンシューズがファッション誌で紹介されたこともあり、大ヒットしたことを今でも覚えています。
当時はアメリカのカジュアルとヨーロッパのカジュアルをミックスするトランスカジュアルと言われたミックススタイルがちょっとしたブームになり、フレンチアイビーの流れもあって、ヨーロッパの登山靴をルーツとするチロリアンシューズもそんなミックステイストに合う靴として注目されていました。
そのような流れの中、BEAMSでも様々なヨーロッパブランドのアウトドア系のシューズを展開していましたが、その中でも特にスタッフや顧客様に注目されていた靴がパラブーツでした。
’80年代半ば頃はフレンチアイビーのブームが起きたこともあり、J.M.WESTONやJ.FENESTRIER、JEAN BADYなどのフランスブランドの靴に注目が集まり、パラブーツも誰もが知っているフランスのラグジュアリーブランドの靴を作っていることでファッション業界人の間で話題になり、日本でも注目されるブランドになりました。
’80年代後半にはその某フランスブランドがチロリアンシューズの甲にアザラシの革を張ったモデルを出し、その後それとほぼ同じものがパラブーツで販売されました。
それに目をつけたスタイリストやエディター、ファッション業界人と言ったトレンドに敏感な人たちに注目されたこともあり、その後一般のお客様にも注目され大ヒットしたことを今でも覚えています。
そんな’80年代に大ヒットしたパラブーツのチロリアンシューズですが、私が初めて購入したのは’90年代に入ってからでした。
大きなブームが起きても飛びつくことはなく、逆に買うことに慎重になってしまうへそ曲がりな私は、’90年代に入り少しブームが落ち着き始めるとようやくパラブーツに興味が湧き始め、人生で初めてパラブーツを購入する機会に巡り合います。
きっかけは、雨の日に履けてジャケットやデニムにも合うカジュアルなレザーシューズが欲しくなり、色々探しているときにこのオイルドスエードのレザーを使ったチロリアンシューズが入荷してきたことでした。
当時のパラブーツはオイルドレザーを使ったものがほとんどで、スエードにオイルをしみこませたようなレザーはとても新鮮に感じました。当時よく着ていたツイード系のジャケットにも馴染む表情のレザーだったことも決め手になりました。
’90年代前半はまだフレンチアイビーの流れが続いていたので、購入当初はオンでもオフでもかなり履いていました。その後本格的に英国調ブームが来ると出番が減っていき、屋根裏でアーカイブとして眠ることになります。
数年前から20数年ぶりにパラブーツを履くようになりましたが、久しぶりにこの靴を見ると、今見てもオイルドスエードのMICHAELはなかなかいいなと思ってしまいます。
秋冬になったら手入れをしてコーデュロイのパンツやミリタリーパンツと合わせて久しぶりに履こうかなと思っています。