ビームス中村さんが「27年経って良さがわかってきた」想い出のハミルトン カーキ

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ハミルトンのカーキ

ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」の秋冬バージョンをご紹介。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第34弾は……?

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【中村アーカイブ】 vol.34 / ハミルトンのカーキ

ハミルトン

1993年にある賞を受賞し、その記念品として贈られたものです。その賞とはS.S.A(Specialty Stores Association)のゴールデンアワード。

S.S.AはBEAMS、UNITED ARROWS、SHIPS、その他数社が参加し、ファッション専門小売業の発展を目的として1991年に発足しました。

そのS.S.Aが毎年年末にチャリティークリスマスパーティーを開催するのですが、その際に各社の年間優秀社員の表彰が行われていました。1993年に私がBEAMSの年間最優秀社員(ゴールデン アワード)を受賞し、記念品として贈られたのが、このハミルトンのカーキのオートマチックでした。

当時は’80年代後半から始まったロレックスを中心とする高級スポーツウォッチブームの最中で、私もすでにロレックスやオメガなどを数本所有していたこともあり、最優秀社員の受賞はたいへん名誉なことでしたが、記念品の時計に関しては正直ハミルトンか……という感じでした。

私がハミルトンを初めて知ったのは’70年代後半頃。田舎の高校生だった私は、当時読み漁っていたファッション誌でカーキのメカニカル(手巻き)のモデルを知りました。ブランドの発祥がアメリカというのも当時アメトラ好きだった私には刺さりました。

その後、大学生になり上京すると洋服好きだった私は、渋谷や原宿、アメ横あたりで洋服屋めぐりをするのが趣味になります。

田舎とは違いハミルトンを扱う店も多く、高校生の頃に欲しかったカーキもいたるところで見かけますが、当時の値段でも田舎から出てきた貧乏学生の私には高嶺の花でした。

そして、ハミルトンのカーキが買えなかった代わりに買ったのが、同じ手巻きの機械式のミリタリーウォッチで、値段も数千円で買えたTIMEXのキャンパーでした。そんな憧れのブランドだったハミルトンも、BEAMSに入社して背伸びして20代後半でロレックスやオメガを手に入れると、所有したいブランドではなくなっていました。

そのような経緯で思わず手に入れたハミルトン、予想していたとおり?数回しただけで着けなくなりましたが、最優秀社員の表彰でいただいた時計なので、これまで大切に保管してきました。

このまま記念品として眠ることになるかなと思っていましたが、昨年くらいから休日のカジュアルなスタイルに合わせて着けることが増えました。

理由は、休日に気張らない気軽で気楽な時計がしたくなり、久々にこの時計を引っ張り出してみたら、小ぶりなケースと少しクリームがかった文字盤が、なんとなく今の気分でカジュアルスタイルにはよく合う時計と感じたからです。

この年齢になり、数十万する時計をいくつも所有するようになりましたが、反面価格ではない価値観のようなものも大事だということを最近感じることが多くなりました。このハミルトンがそれに気付かせてくれたというのも何か深い縁があるのかなと思います。

そして、実は高校生の頃に憧れた手巻きのカーキが今また欲しくなり購入しようと思っています。いただいてから27年経ってやっとこの時計の良さがわかってきましたが、これから一緒に年を重ねていきたい時計のひとつです。

この時計がいつかビンテージと言われるまで愛用し続けたいと思っています。

2024

VOL.341

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