
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを連載形式で紹介する新連載「中村アーカイブ」がスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第7弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.7 /LEEのデニムジャケット

このデニムジャケットは、1986年に購入したものです。当時、先輩たちが着ていたデッドストックや古着のデニムジャケット(Gジャン)。デニムであればリーバイスのサードやリーの101J、ホワイトであればリーバイスのピケやリーのウェスターナーと、あまり古着は詳しくなかったのですが、アメリカ製であっても現行品ではなく、’60年代から’70年代のデッドストックや古着を着るのが、BEAMSのスタッフとしての暗黙の了解のような気風がありました。
当時Gジャンは一枚も持っていなかったので、自分もBEAMSのスタッフになった以上、何か一枚は持っていなければと思い、当時先輩たちが着ていたものを色々見せてもらい、着丈が短くボディーのバランスもいいLEEの101Jに絞って休日の古着屋まわりが始まりました。
私は体が小さいので、まず自分に合うサイズがなかなか見つからず、見つかったとしてもコンディションが悪いか、逆にほぼデッドストック状態のものでかなり高額なものばかりで、なかなかコンディションと価格のバランスが取れているものを見つけるのは難しく、週一日しかなかった休みの日を古着屋周りだけに費やすのに疲れてしまい、理想のGジャン探しも挫折してしまいました。
そんな話を古着に詳しい先輩にすると、「何かいいのがあったら教えてあげるよ」と言ってくれて、その数か月後にコンディションもよく、値段も自分が買える程度のGジャンを見つけてくれて、お金を握りしめてさっそく古着屋に買いに行きました。早速着てみるとサイズはジャストで、色落ちもよくダメージも少ない、しかしタグを見ると101Jの文字はなく、ウェストのアジャスターもない……。探してくれた先輩に相談すると、「101Jじゃないけど怪しいものではないから、この値段でこのコンディションなら買った方がいい」と言われ、手に入れたのがこのGジャンです。
最近またGジャンが着たくなり、あるドメスティックブランドのGジャンを購入したのがきっかけで、このGジャンについてもう少し詳しく調べてみようと思い、古着に詳しいスタッフに見てもらったところ、101Jの後継モデルで’70年代に作られた220ではないかと言う鑑定、そしてウエストのアジャスターがないのは珍しいということ。最近後輩スタッフから色々教えてもらいながら、あらためて古着は奥が深いなと感じています。
もう20年以上着ていませんが、新人の頃に自分の足をつかって一生懸命探した一着なので、これからも手放すことはなく、永久アーカイブとして大切に保管しようと思っています。