スコットランドが生み出す“生命の水”
語れる、スコッチウイスキー入門

ウイスキーの語源と言われるゲール語の「ウシュクべー」は生命の水という意味だ。それは何も知らずに口にしても美味いが、多少の知識を持って飲めばさらに多くの人を魅了する、魔法の水でもある。

土地に根差し、個性を生かすシングルモルトウイスキーの魅力とは

スコッチウイスキーとは何ぞや？　それは、世界5大ウイスキーのひとつであり、スコッチ、つまりスコットランド産のウイスキーであることは説明不要であろう。ほかにも蒸留や熟成方法について厳密なレギュレーションが定められているのだが、ここでは思い切って割愛したい。ご興味と向学心のある方は『ウイスキー完全バイブル』（土屋 守著）などの名ガイドをお読みいただくとして。

「スコッチの愉しみをご教示いただきたい。ただしビギナーにもわかりやすく」と訪れたのは東京・日比谷のバー「キャンベルタウン・ロッホ」だ。木箱が積まれて足の置き場に困るほど狭い階段を下りた先にあるバーは、カウンターの上にまでボトルがズラリ……。レアモルトのコレクションで知られる名店ということで初心者は身がすくみそうになるが、ご安心あれ。店主の中村信之さんはTシャツ姿でいたって気さくだ。

「スコッチの面白さは何と言っても個性。とくに大麦麦芽のモルトだけでつくったシングルモルトは地域や蒸留所によってのキャラクターが際立つので、まずはそちらを数種類飲み比べてみてはいかがでしょう。味わいの系統としてはまずスモーキーなタイプがお好きか、否か。次に、樽での熟成期間が長いものがお好みか。熟成感は、貯蔵に使う樽の種類によっても変わってきます。たとえばバーボン樽ならヴァニラや青りんご、柑橘の香りが立ってくるんですが、シェリー樽だとチョコレートやトフィー、キャラメルのような甘やかな香り。1日にそう何杯も飲めませんので、その日のテーマを決めてバーテンダーと相談し、自分の好みをさぐっていけばいいんじゃないかな」

……となると、飲み方はストレートで（ちょっと自信ないなぁ）？

「もちろんハイボールでも水割りでもいいんですが、個性を楽しめるちょっといいモルトはやはりそのまま味わっていただきたいですね。少しアルコール感が強すぎるようなら、水を1滴ずつ垂らしながらどうぞ」

舌先で好みの味わいを探り探り、1杯、また1杯……これはヌマりそうな予感がする。

教えてくれる人
キャンベルタウン・ロッホオーナー
中村信之さん

ホテルのバーに勤務の後、1999年に独立。店内には常時約400本のボトルが用意される。毎年のようにスコットランドへ足を運び、蒸留所を訪れて樽の買い付けなどを行っている。

［MEN’S EX Autumn 2023の記事を再構成］（スタッフクレジットは本誌に記載）