内視鏡外科手術のパイオニアに聞いた、負担最小の最新「胃がん」手術法とは?

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象徴的なエピソードが、2015年の12月から、集中してGISTの治療で用いている「CLEAN-NET(クリーンネット)」という術式だ。

GISTは基本、腫瘍を完全に切り取れば治る病気だが、多くの病院で行われているのは、胃の外側から胃の壁ごと腫瘍を鉗子でつまんで持ち上げ、ステープラーと呼ばれる切除と縫合が同時にできる手術器具で、胃の壁もろとも腫瘍を根元からバサッと切ってしまう手術だ。非常にシンプルで、手早くできることが利点だが、腫瘍を胃の壁で包み込むようにして切り取るため、腫瘍のまわりの健康な胃がそれなりの広い面積で一緒に取れてきてしまうことに金平先生は抵抗を感じ、自分ではステープラーを使わない「こだわり」の胃内手術を行っていた。

なんとか、簡単に、胃をできるだけ残す手術に改良できないかと模索し、見つけたのが、昭和大学江東豊洲病院 消化器センターの井上晴洋センター長が開発した術式、クリーンネットだった。

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クリーンネットの手順

A:腫瘍の位置を確認する。たいていの腫瘍は胃の外側からでも目視可能。中心の白い丸が腫瘍。上側が胃の外、下側が胃の内側。胃の壁は漿膜、筋肉層、粘膜の3層になっており、腫瘍は漿膜と粘膜の間にある。
B:腹腔鏡を使い、腫瘍の周りの漿膜と筋肉層だけを切り、粘膜は残す。
C:腫瘍を粘膜ごとひっぱりあげる。粘膜は非常に伸びがいい。
D:腫瘍の首根っこを、ステープラーで挟み切除する。
E:腫瘍を切除するのと同時に、粘膜は縫合される。
F:Bで切った漿膜と筋肉層を縫合する。

めざすゴールも極めてシンプル

「クリーンネットなら、わずか15分で手術が完了します。しかも腫瘍のまわりの健康な胃をほぼ残せる。筋肉層はあまり伸びませんが、粘膜はびよーんとよく伸びる性質があるので、本当に少しの切除で済むのです。その上、手術中に胃を開く必要がないので、おなかの中がきれいなまま手術できます。これはバクテリアなどの問題だけではなく、腫瘍細胞がおなかのなかにばらまかれないという大きなメリットがあります。胃の形がいびつになることもなく、機能も損なわない、傷の治りも極めて早い。いい手術です。この2年間で、50人の患者さんに実施し、科学的にも非常にいいデータが得られました」

クリーンネットは金平先生が開発した術式ではないが、これほどの症例を持っている医師はいないらしい。こんなにいい手術なのに、どうしてあまり普及していないのだろう。

「そこが不思議なんですけどね。50人の症例をもとに論文をまとめ、世界的に著名な論文誌に投稿したので、あとは皆さんの審判を待ちたいと思います。

世界が、この素晴らしい術式を認めてくれて、勉強熱心な医師が見て、これは本物のいい手術だと判断したら、患者さんに対して自分でやってくれると思います。それが僕のゴールです。

自分がもしGISTになったら、胃内手術かこのクリーンネットか、どっちかで切除してもらいたい。もちろん、メディカルトピア草加病院で、僕が育てた先生にです」

クリーンネットという術式もシンプルなら、めざすゴールも極めてシンプル。金平先生の医師人生には、太くて硬い背骨がすっきりと通っている。

金平永二(かねひら・えいじ)

メディカルトピア草加病院 院長。1960年生まれ、福井県出身。金沢大学医学部卒。内視鏡外科手術のパイオニア・技術職人。胆のう、胃、大腸、膵、脾など幅広い消化器疾患の内視鏡外科手術を2000例以上執刀。特に直腸腫瘍に対する経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)と胃粘膜下腫瘍手術は、世界トップクラスのエキスパート。診察の相談は、メール、スカイプでも対応。「患者さんからの問い合わせメールには、100%返事を書いています」。

ダイヤモンド・オンライン

[ダイヤモンド・オンラインの記事を再構成]
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