新入社員にありがちな「やりたい仕事病」に上司はどう対処すべき?

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今の仕事が将来どう生きるのか、部下に納得できる説明しているか

 かつてのように有無を言わさずに会社の方針だからといって従わせようとしても、イマドキの若者は納得しない。大事なのは、納得させる説明を丁寧に行うことである。ポイントは2つある。

 一つは、いろんな現場を経験することで多面的な視点が養われ、この先「やりたい仕事」をする時に生かせるということをわかりやすく説明しなくてはならないことだ。

 例えば、マーケティングをやりたいという人が、営業に配属されたとしよう。商品の流れや競合する商品などが見えてくるため、そうした営業経験を踏まえることでより有効なマーケティングを考えることができるようになり、マーケティングのプロとして成長していけるだろう。

 経理や財務の仕事をやりたいのに他の部署になってしまった場合も、いろんな部署を経験することで、予算がどのように使われているのか、どのように必要とされているのかという現場の切実感がわかるようになり、より合理的な判断ができるようになるはずだ。

 このように、今後やりたい仕事をする際に、今の仕事がどのように役に立つかを説明することが大切である。

 Dさんのように「もう、我慢できません」というのは、言ってみれば感情反応だ。感情は認知によってコントロールできる。それが認知行動療法の基本である。それを応用し、わかりやすく説明すれば、感情反応を和らげることができる。

「今携わっている作業は何のために行っているのか」という意味づけを理解すれば、「もう、我慢できません」といった不満は解消される。

日本式人事異動システムのメリットを説明しているか

 もう1つ大事なのは、いろんな部署を経験させる日本式の人事異動システムのメリットを説明することである。

 今回の事例のような問題が起こるのを防ぐため、研修などで初めに説明しておくとよいだろう。

 近頃は、グローバル化を理由に、部門異動がほとんどない欧米式の人事システム(例えば、経理で入社すればずっと経理というように専門職として採用されるシステム)がいかにも合理的でよいといった印象を与える情報がメディアで流される。欧米コンプレックスの強い日本人は、すぐそれを真に受けてしまいがちだ。

 ところが欧米式は、雇用主にとって都合のいいシステムに過ぎない。労働市場の流動化によりその部門に有能な人が入ってきたために不要だと判断されたり、あるいは採算の悪化でその部門が切り捨てられたりといったようなことが起こった場合、他の部署で生き残ることができない。いわば、プロ野球選手やプロサッカー選手のような人生を歩まなければならないのである。

 それに対して、これまでの日本式のシステムは、様々な職種を経験させることで、会社全体を知ってもらうというだけでなく、今の部門がいらなくなったり、より有能な人材が現れたりしても、別の部門で力を発揮してもらうということができる。

 A社長はその後、新人の追加研修を実施した。実務の話だけでなく、日本式の人事異動システムのメリットに触れながら、視野が広がり将来やりたい仕事のプロとして成長していくためにはいろんな経験を積むことがいかに重要であるかを懇々と説き諭したのである。

 そしてCさんと個別面談を行い、追加研修で話したことを再確認したところ、Cさんは納得したのである。Cさんはその後、いろんな経験を積みながら日々の業務に励んでいるとのことであった。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。

榎本博明[心理学博士、MP人間科学研究所代表]

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。


「やりたい仕事」病

ダイヤモンド・オンライン

[ダイヤモンド・オンラインの記事を再構成]
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