綿谷寛画伯の男の嗜みシネモード#13「アウトドアでのドレスアップ」

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成熟した男性を目指すならそれ相応の装い術や嗜みの作法を身につけておきたいものだ。古今の映画に精通する綿谷画伯が印象に残った、映画のワンシーンから切り取りそれらを解説する。

アウトドアでのドレスアップ

今月のお題 アウトドアドレスアップ

絵と文・綿谷 寛

本文の中で”毎シーズン新しい服がほしいという欲が薄れた”と語っているけれど、じつは今シーズンはちょっとほしい服があって(笑)。それはマドラスチェックのジャケットなんだけど、最近本物のインディアマドラスのジャケットってあまり見ないね。マドラス風チェックのヤツばかりで。ナローラペルで短丈じゃないマドラスチェックのジャケット、どこかいいのがあれば教えてもらえませんか?

おしゃれ倦怠期のシニアはいつもと場所をかえて燃える

ファッションイラストレーターとしていかがなものかだけど、近ごろ服に対する興味というか、毎シーズン新しい服がほしいという欲が薄れてきちゃった。それよりもっぱら趣味の対象は食だったりお酒だったり、あるいは食事のあとの葉巻やパイプだったりと、衣食住でいうと、好きな順位は食住衣へとすっかり変わってしまった。

いや、おしゃれに関心がなくなったワケではないんですよ。今日は誰と会うから何を着ようとか、今夜はここで食事をしてあそこのバーで1杯やるからきちんとした格好にしようとか、TPOにはそれなりに気を配るし、トレンドの大きな流れは意識する。なのにシーズン毎にファッション誌に紹介される個々のアイテムにはときめかない……。ボクは今、おしゃれ倦怠期なのでしょうか。

そんな中、倦怠期だからというワケではないが、久しぶりにラブストーリーにどっぷり浸かりたくて、ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ主演の映画『愛と哀しみの果て』(1985年。アメリカ)を観た。

メンズファッションはベルト付きアウターがトレンドという流れの中で、サファリジャケットが注目されているけれど、1910?’20年代のアフリカが舞台のこの映画は、雄大な大自然と共にクラシックでロマンチックなサファリスタイルがたっぷり堪能できる。なんたって衣装デザインは『炎のランナー』や『バリー・リンドン』など、アカデミー衣装デザイン賞を4度受賞しているミレーナ・カノネロですからね、これはもう間違いない! 確か’80年代のサファリブームのきっかけはこの映画じゃなかったかな。

物語は1913年のデンマーク。裕福だが未婚のカレン(メリル・ストリープ)と経済的に不安定な貴族のブロア(クラウス・マリア・ブランダウアー)の2人は“便宜上の結婚”を果たし、アフリカに移住して酪農場を始める。だが、家に居つかず浮気症のブロアとの仲がギクシャクする中、カレンは現地で出会ったハンターのデニス(ロバート・レッドフォード)と次第に親密になっていく……。

いつ野生のライオンが飛び出してくるかわからないサバンナでカレンとデニスはキャンプを張り、テーブルにはクロスを掛けて花を飾る。そして、お酒を飲みながら2人は語らい、蓄音機から流れるモーツァルトに合わせて踊る……。んもぉ?、これで恋に落ちなかったらウソだよね。特に、デニスが詩を詠みながらカレンの髪を洗い流すシーンは映画史に残る名ラブシーン。こんな芸当はロバート・レッドフォードしかできません!

1910年代から’20年代の英領東アフリカが舞台のこの映画。西洋の文化をそのまんま持ち込む、野蛮な振る舞いといってしまえばそれまでだが、しかし、大自然のケニアの地で仰々しいまでのドレスアップや食事の際の労を惜しまないセッティング、調度品の数々は、快適性や機能性を求めてどんどんカジュアル化が進む現代においてじつにロマンチックなものとして映るのだ。

2024

VOL.341

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