「男性美容研究家・藤村 岳の男のひとり旅」前編はこちら
旅の楽しみは、何といっても地のものをいただくこと
さて、お待ちかねの夕食。1階にある「季の杜」にて。広々としたダイニングではあるが、どこもきちんと仕切りがあり、個室と半個室が並ぶ造り。開放感とプライベート感が同時に叶えられる贅沢な空間だ。
ところてんポンチというオリジナルのジュースから始まる。適度な酸味が胃を刺激する。季節の地物の魚介を使った二段重。中にはアジの南蛮漬けや秋が旬のタコを西京漬けにしたものなどを生ビールと楽しんだ。そして刺し盛り。「その日、伊豆半島でとれたお魚を海と相談して決めています」というメニューの文句にいい意味でやられる。地物を食べたいという旅人の心をまさに射抜かれた。地物の魚には地元の酒をということで喜平の特別純米 誉富士をオーダー。
めだい、金目鯛、真鯛、かんぱち、シマアジ、ヒラメとそろい踏み。刺身をいただくのも醤油だけではなく、塩昆布や桜塩、伊豆の生わさびにライムと組み合わせを考えながら食すのも楽しい。
今回は奮発して、伊勢エビと鮑を楽しめる黄金コースをオーダー。伊勢エビはブイヤベース。和食が続いたところに洋風の構成がニクい。ソーセージはジビエのイノシシを使ったものだとか。2日も寝かせたスープに地元野菜と伊勢エビの濃厚なうま味が溶け出している。
お次は昆布と酒、大根で2時間以上蒸し上げたという鮑、口に入れた瞬間に「うお」という変な声が出るほど柔らかい。噛むとあふれるほろ苦い肝の磯の香り、柚子味噌の風味とともにフッと鼻に抜けるのが、まさに快感。飲み込むのがもったいない。ここで富士錦の無濾過純米吟醸原酒へと酒を変える。
続く肉料理は、牛ロース肉。塩ゆでしてから3時間以上低温調理しているためこちらも非常に柔らかい。繊維がほどける食感が舌に気持ちいい。なめらかなカボチャのソースとともにいただく。
伊豆と言えば、金目鯛。金目鯛と言えば、伊豆。というくらいご当地魚として有名な金目鯛が漁師煮で登場! 自家製の甘辛な特製ダレで炊いてあり、身はふっくらして噛めばジューシーという至福を味わえる。皮と身の間の脂身がたまらない。子どもの頃、煮魚が夕飯に出てくると意気消沈したものだが、大人になると180度変わる。滋味豊かな日本酒と合わせると得も言われぬ快感に身を打ち振るわせることに。これが「年を取る、ということ?」。こんな幸せを味わえるのだとしたら、「エイジングも万歳」だ。
白米と味噌汁の到着を待ち、残しておいた金目鯛を煮汁ごと白米にかけて、かっこむ。決して上品ではないが、これがなによりうまいわけで。
茶所・静岡の抹茶の寒天寄せをデザートに〆。大満足の夕餉はこれにて終わり。