アウディの近未来と電動化戦略を担うハイパフォーマンスBEV
ついに生産が始まったスポーツタイプのe-tron
2026年以降の新型モデルを全てBEVとする。昨年、アウディはそう発表し、電動化戦略を一層加速させるとコミットした。その電動化戦略を担うサブブランド名がe-tronで、名前そのものは’09年から使用されている。10年後の’19年、その名もアウディe-tronが登場するに及んで、次世代の核心となるBEVイメージを決定づける名称となった。
SUVタイプを中心にe-tronの展開を積極的に進めてきたが、’21年春、ついにSUVではないBEV e-tron GTの生産が始まった。
デザイン、性能、すべてにアウディらしさを注入
e-tron GTはブランドフラッグシップ、つまりはイメージリーダーとなるべく誕生したモデルであり、アウディにとっては自国ドイツで初めて量産する記念すべきBEVでもあった。クーペスタイルの4ドアセダンで、前後に電気モーターを備えた四輪駆動、つまりクワトロだ。低いノーズからのびやかに描かれたシルエットはエンジンを積まない電動モデルだからこそ実現できたもの。メリハリの効いたラインと迫力のフェンダーラインによって構成されるサイドビューがいかにもアウディらしく、グラマラスでかつ美しい。特にリア周りのスタイルが大迫力で印象に強く残る。
インテリアはあくまでもモダンアウディの文法に則っており、先進的でありながら機能性をも重視したデザインとした。12.3インチの大型ディスプレイをメーターパネルとし、センターコンソールには10.1インチのタッチディスプレイを置く。センターコンソールの物理スイッチを全てなくしてしまうのではなく、ドライブ時の利便性をあくまでも追求したのが特徴だ。コクピット周りのスタイリングに関していうとジャーマンプレミアム3のうちアウディが今、最もコンサバといえよう。音声認識システムを完璧に機能させることが難しい現時点で、新旧ミックスの機能性を採用することは決して悪いことではないと思う。
ホイールベースが2900mmもあるため、後席のスペースにも余裕があり、大人4人が十分に寛げる。オプションでリサイクル素材を活用した「レザーフリーパッケージ」を用意するなど、環境対策にも配慮を見せた。
基本のメカニズムは同じグループのポルシェタイカン四輪駆動モデルと共有する。グループにおけるEV専用のプラットフォームJ1がベースだ。
e-tron GTをブランドのイメージリーダーとしたいというアウディの本気度は、例えば同時にアウディスポーツによるRSモデルをラインナップしたことからも窺えるだろう。
床下に収納されるリチウムイオンバッテリーは93kW/h(うち使用容量は84kW/h)という大容量タイプで、さらにシステム電圧は800ボルト。これによりe-tron GTで最高出力は476PS、最大トルク640N・m、RSe-tron GTではそれぞれ598PS、830N・mとした。ローンチコントロールという発進加速を最大値に制御するシステムを使用すれば、最高出力は各々530PSおよび646PSにまで高めることが可能で、このとき例えばRSe-tron GTの場合、0→100km/h加速が3.3秒とほとんどスーパーカー級の数値を達成する。気になる航続距離はいずれも500km以上だ。