東京五輪のゴルフ日本代表ヘッドコーチを務める丸山茂樹プロが、オリンピアンと語らいながらそのライフスタイルを深掘りする本企画。最終回のゲストは元陸上選手の朝原宣治さん。陸上とゴルフの意外な接点、マスターズ優勝を果たした松山英樹プロの秘話なども飛び出した。
【Fun for Win】VOL.13
東京五輪ゴルフ日本代表ヘッドコーチ 丸山茂樹×朝原宣治[前編]
丸山茂樹さん
1969年生まれ。千葉出身。日本ツアー通算10勝。2000年よりアメリカツアーに参戦して3勝。2002年には伊澤利光プロとゴルフワールドカップを制覇。現在はゴルフ解説などで活躍する傍ら、ジュニアゴルファーの育成にも尽力。東京五輪ではリオデジャネイロ五輪に続き、ゴルフ日本代表ヘッドコーチを務める。愛称は“マルちゃん”。セガサミーホールディングス所属。
朝原宣治さん
1972年生まれ。兵庫出身。高校から陸上を始め、走り幅跳びと短距離で活躍。1996年アトランタ五輪100mで、日本人として28年ぶりに準決勝進出。2008年北京五輪では400mリレーで銀メダル獲得。同年引退し、現在は大阪ガスに勤めながら陸上クラブ「ノビィ トラック&フィールドクラブ」を主宰。生涯スポーツの祭典、世界マスターズ陸上にも挑戦し続けている。
ドイツでは冷製ディナーアメリカでは鮮魚に驚く
丸山 本日のゲストは陸上短距離界のレジェンド、朝原宣治さん。白いパンツがよくお似合いです。
朝原 イタリアのファッションが好きで、セレクトショップのグジに通っています。特に革靴には目がなくて、学生時代には神戸の高架下が行きつけでした。漢方薬局などの店に混じって、当時珍しかったインポートの靴店があったんです。
丸山 小さな店がたくさん並ぶアーケードですよね。僕も訪れたことがあります。ところで、ルーティーンのようなものは、現役時代に競技生活を送る上でもありましたか?
朝原 当初はウェアは赤に限る、左足からスパイクを履くなど決めていました。ただ、ドイツに留学してヨーロッパで転戦するようになってからは、赤いウェアを忘れても記録が伸びたりと結果が結びつかなくなってきたので、捉われなくなりましたね。
丸山 忘れると不安になりますしね。
朝原 ルーティーンに心を揺さぶられるぐらいなら、きちんと準備したほうがいいなと。
丸山 ドイツ留学は大学卒業後、現在もお勤めの大阪ガスに就職されてまもなくですよね。ドイツではどのような生活を送っていらしたんですか?
朝原 まずは現地の暮らしに慣れるために、ドイツ人コーチの家にホームステイしながら語学学校に通ってドイツ語を学びました。
丸山 勉強熱心ですね。
朝原 現地で驚いたのは食事です。昼は温かいものをいただきますが、夜は冷たいパン、チーズ、サラミが基本で、ご飯はほとんど口にしませんでした。ただ、僕はパン派でしたし、ドイツのパンは種類が豊富なので食事は充実していましたね。特に好きだったのはカボチャの種が入ったパンです。
丸山 陸上選手は常に身体を絞っているイメージがありますが、食事制限などもされたんですか?
朝原 結構食べていましたが、練習が激しいので太りませんでしたね。
丸山 やはり走る人はすごい! プロゴルファーは歩くばかりですから。
朝原 週末は宗教上の理由で、多くの店が休業になるんです。それでドイツ人は何をするのか見ていると、森を散歩するんですよ。僕が住んでいたシュヴァルツヴァルトという街は、森が観光名所になる程、有名なんです。
丸山 ライトアップされていたりするんですか?
朝原 それはありませんでしたが、歩道が整備されていて皆のんびり散歩をするんです。
丸山 異文化との遭遇ですね。そもそも留学先として、ドイツを選ばれたのはなぜですか?
朝原 僕が渡独した1995年当時、陸上留学といえばドイツかアメリカしか選択肢がなかったんです。ドイツでは走り幅跳びと短距離の2種目を専門としていましたが、左足を骨折してからは踏み切りが難しくなってしまった。そこで2000年初め、30歳を過ぎてアメリカ留学する頃には短距離に専念することにしました。
丸山 アメリカにも留学されていたんですね。滞在はどちらに?
朝原 テキサス州の州都、オースティンです。テキサス大学で学びました。
丸山 自然が豊かな街ですよね。
朝原 アメリカでは住みたい街ランキング上位に入るそうですね。ドイツとは違って、とにかく食べものに困りました。
丸山 その頃、僕もアメリカツアーに参戦していて、和食恋しさに分厚い電話帳をめくり、血眼になって日本食レストランを探していたので、他人事とは思えません。テキサスは隣接するメキシコの影響を受けたアメリカ料理、テクスメクスが有名ですよね。
朝原 肉を火で炙ったスペアリブのような、大雑把な料理が多かったですね。そうした店は普段通いができないので、パスタなどを自炊していました。
丸山 肉か炭水化物の二択になりがちですよね、アメリカの食事は。
朝原 魚介は日本人の感覚からすると、とても食べられたものじゃない。スーパーに並んでいる鮮魚も、目が白く濁っていたりしましたし。
丸山 僕もオイスターバーの牡蠣などは、いまだに怖い。アメリカで唯一食べられる魚介は、ホタテぐらいです。