ビームス中村さんがイタリア人からも褒められた!「英国製モールスキントラウザース」

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モールスキントラウザース

ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」の秋冬バージョンをご紹介。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第33弾は……?

中村アーカイブ細バナー

【中村アーカイブ】 vol.33 /BEAMS F英国製 モールスキントラウザース

BEAMS F英国製 モールスキントラウザース

’90年代中~末ごろに購入しました。’90年代に入ると英国調がトレンドとなり、BEAMSでも様々な英国製のアイテムを展開するようになりましたが、ジャケットやスーツに関してはパリのオールドイングランドのジャケットが唯一、英国製(オースチンリード製)であったのみで、ドレスクロージングは一部のデザイナーもの以外は展開していませんでした。

そのような状況の中、あるインポーターさんからCORDINGSやHACKETTのジャケットやスーツ、トラウザースを生産している工場でBEAMS Fのオリジナルを作れるというお話を頂き、パターンからすべて作りこんで英国製のオリジナルのジャケットやスーツの展開を始めました。

スタッフや顧客様からの評判も良く数シーズン展開しましたが、’90年代半ばごろになると徐々にイタリアの製品が日本に入り始め、接着芯で作られていた英国製のジャケットやスーツはイタリアの製品と比べるとクオリティーとプライスのバランスの面で優位性がなくなり、展開をやめることになりました。

スーツやジャケットの展開はやめましたが、トラウザースに関してはイタリアの製品と比べてもクオリティー、プライス両面で遜色はなく、なにより当時のイタリアブランドでは英国っぽい雰囲気のトラウザースを作ることが難しかったこともあり、それ以降も継続して展開していました。

当初は当時CORDINGSやHACKETTで展開していたようなワンプリーツのサイドアジャスターのモデルを展開していましたが、’90年代半ばごろになると徐々にノープリーツの流れが来て、そのタイミングでオーダーしたのがこのトラウザースでした。

生地は英国の定番、BRISBANE MOSS(ブリスベン モス)のモールスキン。今ではあまり見かけなくなったモールスキンですが、当時は英国調がトレンドだったこともあり、英国の定番素材だったモールスキンはたいへん人気がありました。

ちなみに、当時CORDINGSがPITTI UOMOに出展していましたが、イタリアでもモールスキンが大人気で、特にイタリア人はブラウンのモールスキンばかりオーダーするというエピソードもありました。

ネイビーのジャケットにブラウンのトラウザースという、アズーロ エ マローネのコーディネートは、この頃から定番だったということですね。

そのような情報もあり、少しイタリア的な流れも気にしつつブラウンも購入しましたが、結局ベージュの出番が多く、ブラウンは最後まで穿きこなせなかったことを今でも覚えています。

コーディネートはツイードのジャケットやシェットランドのニットとよく合せていました。まだイタリアのブランドの服をそれほど持っていなかった時期なので、英国製のビエラのタッターソールのシャツにスコットランド製のシェットランドのニットを合わせ、靴は英国製のクレープソールのスエードチャッカを履き、その上にBEAMS Fのオリジナルの英国製のオリーブグリーンのオイルドコートを着て、まるで英国人のようなコーディネートをしていました。

そのスタイルでミラノに行ったらイタリア人にやたらと褒められたことは、私の洋服屋人生の中でも印象深い出来事でした。

’90年代後半に入りイタリアのクラシックの流れが強くなると、他のアイテムと同様に生地バリエーションが多く、少ない数量で別注のできるイタリアのパンツブランドが台頭しました。生地のバリエーションが変わらない英国のトラウザースの展開が難しくなり、2000年代に入ると英国製のオリジナルの取り組みも終わりを迎えました。

その後このファクトリーも廃業してしまい、いま英国製のトラウザースを作れるファクトリーは無くなってしまったそうです。

’90年代半ばごろはニューテーラーと呼ばれた次世代のテーラーたちも現れ、まだ英国が元気だった時期。その時代を知る私にとっては、このトラウザースはBEAMSにとっても最後にオーダーした英国製トラウザースなので思い入れも深く、20年以上大切に保管してきました。

今後も穿くことはないですが、少なくなっていく英国のプロダクトの資料として今後も残していきたいと思っています。

2024

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