’80年代の人気アメリカシャツ「トロイ シャツ メーカーズ ギルド」とは?

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TROY SHIRT MAKERS GUILDのシャツ

ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」の秋冬バージョンをご紹介。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第29弾は……?

中村アーカイブ細バナー

【中村アーカイブ】 vol.29 / トロイ シャツ メーカーズ ギルドのシャツ

トロイ シャツ メーカーズ ギルドのシャツ

’80年代後半から’90年代前半に購入しました。今でこそBEAMS Fはイタリアブランドのシャツの展開が多いですが、’80年代から’90年代半ばごろまでは英国ブランドとアメリカのブランドのシャツをメインで展開していました。

当時展開していたアメリカのシャツで最も人気があったのがIKE BEHARでした。アイクベーハーはラルフローレンのシャツを生産していましたが、’80年代にラルフローレンが米国製のシャツの生産をやめたのをきっかけに、ラルフローレンの米国製のシャツを作っていたファクトリーブランドとして日本で有名になりました。

そのアイクベーハーと並んで人気があったのが、トロイ シャツメーカーズ ギルド(通称トロイ)でした。トロイはブルックスブラザーズやJ.PRESSのシャツを生産しているファクトリーとして有名で、BEAMS Fでは当時、アイクベーハーとトロイの2つのブランドをアメリカのシャツブランドのメインとし、そのほかにGITMAN BROTHERSやFERRELL REEDなどのブランドをスポットで展開していました。

トロイはブルックスブラザーズのシャツを生産していたという経緯もあり、当初はブルックスブラザーズ風のボタンダウンを展開し、その後ワイドスプレッドをバリエーションに加え展開していました。

定番のオックスフォードやギンガムチェック、タータンチェックなど、英国のシャツとは違うアメリカの雰囲気が顧客様にも好評で、毎シーズンよく売れたことを今でも覚えています。

一方で、当時のアメリカの製品はすでに大量生産の波が来ていたことで細かな修正や別注に対応しなくなり、トロイもカフスのギャザーの分量を少し増やしてほしいというリクエストに対してミニマムが1000枚と言われ、’90年代に入ると、ものづくりにこだわるBEAMSにとっては徐々にオーダーが難しくなっていきました。

そして、’90年代も中ごろになると数十枚で別注を受けるイタリアのシャツブランドがどんどん日本に上陸し、いわゆる小回りの利かないアメリカのブランドは淘汰されるようになり、トロイもこの頃に展開をやめることになりました。

ちなみに、アメリカは’80年代に入るとアルマーニに代表されるイタリアンデザイナーの服が台頭し、その流れは’90年代も続き、いわゆるアイビー的なアメリカントラッドにとっては厳しい時代でした。

当時、アメリカの老舗パンツメーカーはイタリアブランドが展開していた3プリーツの極太のパンツを作り、老舗のシャツブランドも一番売れていたのが、やはり当時イタリアブランドでよく見られたダブルポケットのオーバーサイズのシャツと言われていました。

その後トロイは、このような時代の波にはあらがえず廃業し、インディビデュアライズドシャツが買収して現在もブランド自体は存在しますが、当時と同じプロダクトなのかはわかりません。

このトロイのシャツは、アメリカントラディショナルがまだ元気だった最後の時代(’80年代後半)に展開していた貴重なアーカイブで、自分がアメリカのブランドをバイイングしていた時代の代表的なブランドなので、永久アーカイブとして残していきます。

2024

VOL.341

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