東京五輪ゴルフ日本代表ヘッドコーチを務める丸山茂樹プロが、オリンピアンたちと語らいながらライフスタイルを深堀りする本企画。第6回のゲストは、リオ五輪カヌー・スラロームで銅メダルを獲得した羽根田卓也さん。練習拠点とするスロバキアでの知られざるライフスタイルにも迫る。
【Fun for Win】VOL.06
東京五輪ゴルフ日本代表ヘッドコーチ 丸山茂樹×羽根田卓也[後編]
丸山茂樹さん MARUYAMA Shigeki
1969年生まれ。千葉出身。日本ツアー通算10勝。2000年より米ツアーに参戦し3勝。2002年には伊澤利光プロとのペアでゴルフワールドカップを制する。東京五輪ではリオ五輪に続き、ゴルフ日本代表のヘッドコーチを務める。愛称は“マルちゃん”。
羽根田卓也さん HANEDA Takuya
1987年生まれ。愛知出身。小学生からカヌー・スラローム競技を始め、高校卒業後は強豪国のスロバキアで武者修行。北京五輪14位、ロンドン五輪7位入賞を経て、リオ五輪でアジア人初の銅メダルを獲得し、“ハネタク”のニックネームで一躍人気者に。現在は東京五輪に向けて鍛錬に勤しむ日々。ミキハウス所属。
目下、茶道に興味津々 きっかけは天啓のようなある一言
丸山 試合に臨むにあたって、習慣にされていることはありますか?
羽根田 必ず湯漬けをいただきます。ごはんにお湯を注いで漬物などを入れるお茶漬けのようなもので、侍が出陣前に食べていたそうです。
丸山 試合は戦なんですね。
羽根田 自分を奮い立たせてテンションを上げるための、儀式のようなものかもしれません。
丸山 羽根田さんはもしかして歴史好き?
羽根田 はい、歴史小説が大好きで渡航する際は必ず持参します。特に好きなのは、司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』です。
丸山 司馬遼太郎! 僕の父と同じじゃないですか。父は本好きだったけれど僕は苦手で、何ページか進んではまた読み返したり、人物相関図を書き出したりしたくなっちゃうんです。歴史上の好きな人物はいますか?
羽根田 まさに『燃えよ剣』の主人公、新選組の土方歳三です。打算なく筋の通った生き方をして、最後まで自分の信念を貫き通したところに惹かれますね。
丸山 根っからの侍なんですね。そんな羽根田さんの休日の過ごし方も気になります。
羽根田 最近、茶道を始めました。遠征先の萩で器に興味をもって、萩焼について書かれた本を読んでみたんですが、帰り際にふと立ち寄った店で、あるお茶碗と運命的な出会いをしたんです。不均斉、自然、枯高、脱俗……これはまさに自分が本で読んだ、美しいとされる至高のお茶碗だと。
丸山 さすが歴史好き(笑)。
羽根田 そのお茶碗の佇まいは、僕と一切目を合わせずに器について独り言のように語る、店主兼陶芸家の佇まいとも重なって見えました。「お茶も是非やってください。周りの環境も変えてくれますから」。最後にボソッと言われた言葉が天啓のように響いて、俄然茶道をやる気になったんです。