名門靴ブランドに永久不滅のストレートチップがあるがごとく、インコテックスには「100」がある。“穿いて美しい”というパンツ本来の魅力がシンプルに凝縮された一本は、まさに真のマスターピースと呼ぶに相応しい。
「インコテックス #100チノ」
その存在意義はもはやストレートチップと同じだ
数年前から、大人の休日パンツに大きな変化が起きていることは周知のとおり。ヘリテージやスポーツなど様々な新機軸に注目が集まっている。インコテックスもそうした流れを取り入れた新作を発表しているが、本誌は今、あえて定番「100」を推したい。
ノープリーツに細身テーパードというシンプルな顔つきは、今のトレンドの中にあっては少々薄味に感じるかもしれない。しかし、本作こそインコテックスの真髄が凝縮された一本だと断言しよう。その魅力は、いうなれば老舗英国靴ブランドのストレートチップのようなものだ。
ドレスシューズの大基本であるストレートチップは、最もごまかしの効かない靴でもある。装飾がないぶん、木型の完成度や吊り込み技術、革質といった本質的な完成度が如実に現れるからだ。だからこそ、名品と称されるストレートチップはそのブランドのアイデンティティを示す看板となる。
翻って、インコテックスのアイデンティティといえば“美脚”。「100」を見ると、装飾性を排したシンプルさゆえにシルエットの完成度が鮮やかに浮かび上がってくる。脚に沿うテーパード、ダボつきのない腰回り、切れ上がった股下。どこを見ても全く隙がない。これぞまさにインコテックスの本質的魅力なのである。
ワイドシルエットやヘリテージテイストを全面に押し出したパンツは確かに目新しい。しかし一方で穿きこなしが難しかったり、体型を選んだりする一面があることも否めない。その点、「100」はあらゆる服と靴に合い、着用場面を選ばず、長く飽きのこない普遍的魅力がある。
だからこそ、上質なストレートチップと同様、紳士のワードローブの核となるのだ。
本格靴の基本にして究極
ストレートチップ
“わかってる”靴好きが靴の良し悪しを論じるうえでまず注目するのがストレートチップ。大基本ゆえ、品質や美意識といった靴作りの本質が表れるからだ。こちらはC&Jの大定番「オードリー」。8万9000円/クロケット&ジョーンズ(グリフィンインターナショナル)