【加藤綾子 一流思考のヒント】
第23回 パナソニック テクニクスブランド事業担当参与 アプライアンス社副社長技術担当 小川理子さん[後編]
Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり女優としても活動。現在は報道番組『Live
News it!』(CX)のメインキャスターを務めるほか、『ホンマでっか!? TV』(CX)にレギュラー出演中。著書に『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』(文響社刊)。
小川理子 Michiko Ogawa
1986年慶應義塾大学理工学部卒業、松下電器産業(現パナソニック)株式会社に入社。パナソニック株式会社 テクニクスブランド事業担当参与・アプライアンス社 副社長・技術担当(兼)技術本部長・テクニクス事業推進室長。ジャズピアニストとしても15 枚のCDリリース。他多数の公職を担う。
「『テクニクス』を体験して音の発見を怠っていたことに気付かされました」
(加藤さん)
加藤小川さんのように個性的な発想で、高いモチベーションを保つ秘訣のようなものは?
小川新入社員のときに「音響で世の中にないものを作る」と決めたんです。当時の研究所長に「特許を書きなさい」と言われたことがあって、キョトンとしていたら、「あなたが分かっていることより、世の中というのは無限に分からないことの方が多い。そういうところにちゃんと目を向けなさい」と。つまり、自分が分かっている範囲で考えてもイノベーションは起こらない。すでに存在するものを追いかけることがエンジニアやクリエイターの醍醐味ではなく、異なる領域に点在するものを組み合わせたり、プロデュースをすることがイノベーションなんだと示してくれたんだと思います。その一言はものすごく自分の中に残っていて、今でもそれを実践している感じです。
加藤広く世界を知ろうとする好奇心が大前提ということですね。
小川仕事でもプライベートでも「今日はどんな面白いことをしようか」「毎日同じことの繰り返しはしない」と決めていて、みんなにもよくそう言っています。通勤路でもわざと変えたりすると「こんなところにお地蔵さんがいらっしゃった!」とか、何かしら発見があったり。会社に入って何年かしてくると、どうしても考え方や行動範囲が膠着してくる。コンサートに行くとか、絵画を観るとか、意識して日々何かに感動したり、心動かされる時間を作らないと、新しい発想なんて生まれません。
加藤ところで、小川さんはお手本にされてきた方などはいらっしゃるんですか?
小川坂本龍馬です。高校1年のときに「龍馬は私の恋人だ!」と言って、京都の霊山護国神社にあるお墓の下にラブレターを埋めに行ったくらい大好きで(笑)。ちなみに境内の前には国を憂いて命を投げ打った幕末の志士たちの精神を検証する霊山歴史館を運営する公益財団法人があるんですが、なんとパナソニックの創業者である松下幸之助が初代会長なんですよ。「テクニクス」に従事する前、CSR(企業の社会的責任)の部署にいたときにその財団法人の担当になったんですが「ラブレターを埋めにきた私を、龍馬は見ていてくれたんだ」と思いました(笑)。
加藤ラブレターの返事を受け取ったかのような巡り合わせですね(笑)。龍馬のどこに惹かれるんでしょうか?
小川あの時代にあれだけ開けた精神を持って、何にとらわれることもなく、志を実行した行動力でしょうか。私たちの会社や組織でもアイデアがあったとしても、いろいろな制約条件があって、本当に行動に移すのはものすごく大変です。私もいざというときは何にもとらわれずスパッと力が出るような境地に達したいなと。