多くの個を束ね、組織を成功に導いている一流のトップには、どんな思考があるか? 会社のマネジメントにも役立つ”ヒント”を、カトパンことフリーアナウンサーの加藤綾子さんがそっと探り、お届けする。
【加藤綾子 一流思考のヒント】第22回 九州旅客鉄道 代表取締役会長執行役員 唐池恒二さん[前編]

※最後に加藤綾子さんのスペシャルフォトギャラリー付き!
Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり女優業もこなす。現在は『ホンマでっか!? TV』(CX)にレギュラー出演するほか、報道番組『Live News it!』(CX)のメインキャスターを務める。新著の『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』(文響社刊)も好評発売中。
唐池恒二 Koji Karaike
1953年大阪府生まれ。’77年京都大学法学部卒業後、日本国有鉄道入社。’87年国鉄分割民営化に伴い、九州旅客鉄道総務部勤労課副長に。外食事業部長、経営企画部長、JR九州フードサービス社長などを経て、2009年九州旅客鉄道社長に就任。’14年より代表取締役会長、’18年より現職。著書に『鉄客商売』(PHP研究所刊)などがある。
「結局、ビジネスを左右するのはコミュニケーション。部下やお客さまの心を掴み、動かしたければ、ビジネス書より恋愛小説を読んでみることです」
(唐池恒二さん)
フェイス・トゥ・フェイスの人間関係にこだわる
加藤唐池さんは池波正太郎の大ファンでいらして、『鬼平犯科帳』からは良きリーダーとは何たるかを学ばれたそうですね。
唐池あの本は実にいい指南書だと思います。私が感動したのは、主人公・長谷川平蔵の「その気」にさせる力。彼は身分の低い密偵とでも対等に付き合い、優しい言葉をかけ、同じ鍋をつつくんですよ。するとね、もともと引け目を感じている密偵は「何がなんでもこの人についていこう」と猛烈に働くわけです。詰まるところリーダーというのは組織の中の一人ひとりをいかにしてその気にさせるかなんですよね。
加藤そうは言っても、相手をその気にさせるって簡単なことじゃありませんよね?
唐池私がまだ若かった頃に駅長らと語り合っていたら、「現場長としてこれからの時代を生き抜くにはどんな本を読めばいいか」と質問されました。恐らくその場にいた誰もがビジネス書の類が挙げられると予想したでしょう。しかし、私は間髪入れずにこう言いました。「恋愛小説を読みなさい」
加藤興味深い!
唐池恋愛って、好きな人を見つけて、その人を振り向かせることでしょう? ビジネスも所詮は同じでね、つまりは部下やお客さまをその気にさせられるかどうか。ならば恋愛小説を活かさない手はない。あれには人間の心の機微が克明に描写されていますから。
加藤もしかすると恋愛上手は仕事もデキるのかもしれませんね。実は偶然にも、最近、そんな話で盛り上がったことがあったんです。
唐池古今東西の立派なリーダーを見ていますと、相手の気持ちを察し、ニーズを汲み取る能力を生まれながらに持ち合わせているのではないかとしばしば思わされます。でも、私自身はそうじゃない。実践から学んできました。JR九州(九州旅客鉄道)に勤めて32年、鉄道以外の事業に長らく携わりましてね、その経験がうんと役に立ったんです。今はビッグデータを活用する時代と言われますけど、私はそれを過信したくなくて、まずは自分自身がいいと思ったことを取り入れる。”自分マーケティング”というやつですね。その成果がすぐに出るのが外食事業。何しろ、お客さまの表情を見れば、そのサービスが良いのか悪いのかが一目瞭然。そこから本当に求められていることは何なのかを地道に追求していくんです。