アルファ ロメオ・ステルヴィオのディーゼル追加で見えた、世界のSUV事情

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ステルヴィオ

新型ディーゼルエンジン搭載でステルヴィオの走りはどう変わる?

ステルヴィオの魅力は大きく分けて三つある。アルファ ロメオというよく名の知れたイタリアンブランドのSUVであること。そのスタイリングデザインがいかにもアルファっぽくスポーティでエレガントなこと。そして、背の高いSUVでありながらスポーツカー顔負けのハンドリング性能を有すること。

なかでも最後の点に関していうと、日本でのデビュー当初、”これじゃ過敏に過ぎる”との評価も散見されたけれど、見当違いの批評も甚だしいと思う。ブランドやデザインに通底する性能を発揮することが、他のありふれたSUVたちと決定的に違う個性なのだ。それが嫌なら他のSUVを選べばいい。見栄や格好だけでクルマを選んで欲しくないという、それは老舗のイタリアンカーブランドらしい矜持の現れだと思っている。

ステルヴィオのボディ
2?のガソリンエンジンモデル(655万円?)に加えて2.2リットルのディーゼルターボ(617万円)を追加したアルファ ロメオ初のSUVであるステルヴィオ。

ステルヴィオの日本仕様にはこれまで、2リットル直4ターボとフェラーリ開発の2.9リットルV6ツインターボという二種類のガソリンエンジンが積まれていた。けれども本国仕様にはもうひとつ、クルマ運転好きの食指も動くよくできたパワートレーンがあって、ソッチの方がSUVのステルヴィオには似合うと思っていた。実際、イタリアでレンタカーを借りる際には、そのパワートレーン搭載モデルをよく指名したものだ。

ディーゼルターボ仕様である。

現代のクリーンディーゼルエンジンは、コモンレール方式という技術があってこそ。アイデアそのものは古くからあったものだけれど、日本のデンソーが日野レンジャー用に採用したのが世界初(商用車)だった。

フィアットグループ(現FCA)も90年代半ばごろから乗用車用を開発しはじめており、その計画が(FCAにとっては惜しいことに)ボッシュに引き継がれてから華開く。97年に登場したアルファ156 2.4JTD(直5ディーゼル)が乗用車用としてコモンレール世界初となったことが、FCAにとってはせめてもの慰めというべきか。

筆者は156や159といった歴代アルファ ロメオのディーゼルターボ搭載モデルを海外試乗会で試すたび(欧州のジャーナリストはガソリンエンジン仕様など目もくれなかったものだ)、日本にも輸入して欲しいと言い続けてきた。それがやっと叶ったのだから、逆風のなか決断したジャパンサイドはもちろんFCAの戦略を歓迎したいと思う。

導入されたのはステルヴィオとジュリアのディーゼルターボ搭載グレードだ。いずれも2.15リットル直4+8AT仕様。圧縮比は15.5で、最近のトレンドに則り低めの値をとる。ステルヴィオ用エンジンのスペックは最高出力210PS&最大トルク470Nmで、200kg以上車体の軽いセダンのジュリア用には少し抑えた190PS&450Nm仕様を積む。

このディーゼルエンジンそのものは非常に軽く、ステルヴィオ同士で比較すれば、ガソリン2リットル直4エンジン搭載グレードに比べて+10キロに収まった(装備内容、仕様はほぼ同じだ)。

ステルヴィオのバックスタイル
走り、そしてデザインとアルファ ロメオのDNAを色濃く継承したステルヴィオ。ボディサイズは全長4690×全幅1905×全高1680mmとなる。カテゴリとしてはミディアムサイズSUVに分類される。

ステルヴィオはそもそもジュリアQ4の背を高くしただけのように走るSUVだ。ステアリングギアレシオは12:1とたまげるほどクイックで、ジュリア譲りのキレ味抜群なハンドリング性能をもつ。重量増が抑えられたので、ディーゼルエンジン搭載グレードでも基本的にドライブフィールは変わらないはず。否、トルクのあるぶん、いっそう期待していい。

やっと日本にやってきたアルファ ロメオのディーゼル。ステルヴィオの本命だ。そう喜び勇んで走り出した途端、少々面食らう。発進キャラが穏やかだったからだ。アクセルコントロールがし易い、とも言えるけれど、少々かったるい。アルファのディーゼルだから、欧州車のディーゼルだから、と、軽く踏み込むだけでつんのめるような出足を期待するとガッカリするかもしれない。

もっとも、これだけ大きなトルクがあって、ハンドルのみならずアクセル操作も敏感、となれば、とても扱いづらいSUVになりそうだ。これがギリギリのチューニングだったか。そういえば最新のディーゼル車はドイツ勢もふくめ、おしなべて発進加速が上品になった。ちょっと前までみたいに、燃料を盛大に吹けないから、でもある。

加速中もしばらくは滑らかさのほうが際立った。期待していたほど爆発的な加速フィールはなく、丁寧に制御されているという印象が先に立つ。決して遅くはない。けれども劇的とはいえない。正直にいうと、これならガソリンエンジンの快活なエンジンフィールのほうがアルファらしいと思ってしまう。

ディーゼル独特の音もアイドリングストップ再始動や微速域で少し気になった。もっとも、音に関してはこれまたこのクラスはいずこも同じようなもので、たとえばBMW X3あたりでも同じくらいうるさい。遮音装備などの関係で、このクラスの静粛性には限界がある。

もちろん、50km/hを超えてくれば、ディーゼルエンジン車をドライブしているとはまるで思えなくなるが、それはもう常識の性能というべきだろう。

イタリア車らしくインテリアカラーも多彩。写真のレッドの他にチョコレートやベージュなど艶やかな色が設定され、シートも6種類のカラーが用意されている。

イタリア車らしくインテリアカラーも多彩。写真のレッドの他にチョコレートやベージュなど艶やかな色が設定され、シートも6種類のカラーが用意されている。

パワーランバーサポートやシートヒーターなどを備えるフロントシート。スポーツパッケージにはスポーツレザーシート、ラグジュアリーパッケージにはプレミアムレザーシートが設定される。

パワーランバーサポートやシートヒーターなどを備えるフロントシート。スポーツパッケージにはスポーツレザーシート、ラグジュアリーパッケージにはプレミアムレザーシートが設定される。

日本に導入されている全グレード共に8速ATを設定。シフトレーバー下のダイヤルで3種類のドライブモードを選択することができる。

日本に導入されている全グレード共に8速ATを設定。シフトレーバー下のダイヤルで3種類のドライブモードを選択することができる。

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