「リーダーたちの本とメガネ」星野リゾート 星野 佳路氏

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リーダーたちの本とメガネ

選ぶには理由がある。そこにその人となりを読み解くヒントが隠れている。リーダーとしてビジネスを牽引する男たちが愛読する本&愛用するメガネから、厳しい競争の中で奮闘する彼らの思考法やビジネス哲学に迫る。

星野 佳路氏

Profile

星野リゾート
星野 佳路氏

1960年、長野県軽井沢町生まれ。'83年、慶應義塾大学卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。'91年、星野温泉4 代目社長に就任。'95年、星野リゾートに社名変更。さまざまな再生案件に携わり、現在は、ラグジュアリーライン「星のや」、小規模高級温泉旅館「界」、西洋型リゾートホテル「リゾナーレ」、 都市観光ホテル「OMO」(※2018年春、北海道・旭川、東京・大塚に開業予定)の4ブランドを展開。


偶然の客観視から導かれたアイデンティティの発信術

日本メガネベストドレッサー賞の受賞経験を持つ星野リゾート 代表・星野佳路氏。そのメガネ姿はすっかりお馴染みだが、聞けば、メガネにこだわるようになったのは代表に就任してしばらく経ってからのこと。ある記事がきっかけになったという。

「日本ではバブルが崩壊し、いくつものリゾートホテルが経営破綻に追い込まれていた頃です。幸運なことに増収増益を達成していた当社は、新聞や雑誌に取り上げていただくことになった。その紙面に掲載された自分の写真を見て、がっかりしまして。というのも、何の変哲もない顔つきで、これでは企業イメージのアップには繋がらないなあ、と。で、メガネを変えてみようと思い立ち、存在感のある黒縁タイプを入手したのです」

星野氏の発想はプラスに働いた。当時、星野リゾートはその拠点を軽井沢に置きながら、運営体制を拡大しつつあった。それに伴い、氏も全国各地を飛び回るようになっていた。その先々で、新しいメガネを掛けた氏は強い印象を残すようになっていったのである。

「なんだ、そのメガネは。変な奴がいるな。きっと、最初はそんな風に思われていたはずです。私たちのような小さな企業は、与えられた機会を最大限に利用して自分たちのアイデンティティを発信しなければ、なかなか存在価値を見出してもらえません。私の顔が世間の目に留まることで、当社が日本の文化、地域の文化を大切にして観光事業に取り組んでいることを伝えられればこれ以上の喜びはない。私なりのささやかな戦略でした(笑)」

メガネを戦略的に使う。わずか15年ほどの間に約40ものホテルやリゾートを運営し、日本を代表するリゾートホテルチェーンを作り上げた星野氏らしい発想である。

「さらに言うと、オケージョンによって使い分けています。今、掛けているのは会議用(写真)。それから海外用、会食用...銀行や役所に行くためのものもあります。ウルトラセブンの変身と同じく、掛け替えることで自分のモードをチェンジするのです。言うなれば、自己暗示。私にとって自己暗示は大事で、メガネがその一助として有効に機能してくれているのは間違いありません」

さて、先に星野氏は「私たちのような小さな企業は~」と発言したが、氏の経営スタイルもまた、そのような考えゆえに辿り着いた"独特"なものと言えるのかもしれない。それを物語るのが、氏が「熱心に熟読した」というマイケル・E・ポーター著『ON COMPETITION』や、ケン・ブランチャード著『Empower ment Takes More Than a Minute』(現『社員の力で最高のチームをつくる 〈新版〉1分間エンパワーメント』)など、経営学の専門家が書いた本である。氏はこれらを「教科書」と表現する。

中小企業の経営にこそ、"教科書"の理論が大いに役立つ

「私は星野リゾートの代表に就任して以来、教科書に学び、その通りに経営してきました。社員のモチベーションアップも、サービスの改善も、旅館やホテルのコンセプトづくりも、すべて教科書で学んだ理論に基づいて実践されています」

教科書の理論は、果たしてビジネスの現場で役に立つのだろうか。そんな疑問も湧くが、それに対して、星野氏はこう断言する。

「これまでの経験から、教科書に書かれていることは正しく、実践で使えると確信しています。私が教科書通りに経営するのは、経営判断を誤るリスクを最小にしたいから。大企業に比べて体力が乏しい中小企業にとっては当然の考えです。米国のビジネススクールで教える教授陣が書いた教科書は、"ビジネスを科学する"という思想のもと、数多くの企業を対象に手間と事例を調査し、そこから法則を見つけ出して、理論として体系化しています。その内容は学問的に証明されている。正しさはお墨付きなのです」

ちなみに、氏によれば理論の"つまみ食い"はもってのほか。100%教科書通りに実行するのが成功の秘訣、とのことだ。

BOOK

今があるのは、この本を教科書とし、
その理論を忠実に実行してきたがゆえ


『ON COMPETITION』は米国留学中に経営学者、マイケル・E・ポーターの理論に出会って感銘を受けた星野氏が経営者となり、「勝てる戦略」を立案するために参考にした一冊。
『社員の力で最高のチームをつくる〈新版〉1分間エンパワーメント』は、人が本来持つ知識や意欲などのパワーを引き出して組織を再生する方法を、わかりやすいストーリー形式で解説。星野リゾートの業績回復を後押し。

GLASSES

メガネを変えてモードチェンジ。
自己暗示に大いに役立っています


GLASSES
GLASSES
Frame Type:Square / Brand:Less than human

星野氏が仕事で主に使用するメガネは5本。会議(写真)、会食、海外出張など用途に応じて使い分け、自分のモードを切り替えているという。なお、購入する際はデザインや色を優先。行きつけのショップは「オブジェ・イースト」。ポップなもの、アヴァンギャルドなものなども豊富にセレクトする一軒だ。



[MEN'S EX2018年04月号の記事を再構成]
撮影/岡田ナツ子 構成・文/甘利美緒 イラスト/佐藤 剛

『ON COMPETITION』マイケル・E・ポーター

『ON COMPETITION』マイケル・E・ポーター

『社員の力で最高のチームをつくる 〈新版〉1分間エンパワーメント』ケン・ブランチャード<br>
(『Empower ment Takes More Than a Minute』)

『社員の力で最高のチームをつくる 〈新版〉1分間エンパワーメント』ケン・ブランチャード
(『Empower ment Takes More Than a Minute』)

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