"レ・ザトリエ"を歩く【時計王・松山 猛のBASEL2018】

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バーゼル


バーゼル取材 DAY5

チャペックとウルバン・ヤーゲンセンに注目

バーゼルワールドも昔に比べると様変わりが激しくなり、以前独立系のブランドが肩を並べていた通称"テント村"も今はなく、1号館の3階の"レ・ザトリエ(LES ATELLIERS)"において多くの独立系ブランドが、独特の世界を展開していた。

しかもフェア期間が2日も短縮されてしまったため、ゆっくりとあちこちの新作を見て歩く時間が少なくなったのが残念だったが、それでもなんとか時間を見つけては、独立系ブランドの時計を見て歩いた。

なかでも興味深かったのは、クラウド・ファウンディングによって立ち上げられた、ジュネーブの「チャペック」や、これもまた長い歴史を誇る「ウルバン・ヤーゲンセン」といったブランドだ。

チャペック
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その昔、ポーランドからロシアの支配を逃れたアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック(Antoine Norbert de Patek)と、同じく亡命を果たしたボヘミア人時計師フランソワ・チャペック(François Czapek)が、1839年にジュネーブに立ち上げた時計メゾン「パテック&チャペック」は、ポーランドにちなんだ注文品の懐中時計を得意とした会社であり、それが現在のパテック&フィリップの原点となったのである。
やがてチャペックは会社を去り、その後の消息は残されていなかったのだが、その偉大な人物の名を冠した時計を現代によみがえらせようと、2011年に有志による投資によってスイスで「チャペック」ブランドの復興を果たし、現在ヌーシャテルを拠点にオリジナルムーブメントなどによる時計作りをしている。

今年はフォーブル・ド・クラコヴィという、ボーシェ・マニュファクチュールのクロノグラフムーブメントを、自社で最終仕上げをしたクロノグラフで、グランフー(エナメル焼成した)文字盤を持つ物や、レインフォレスト・グリーンと彼らが呼ぶ、美しいギヨシェ文字盤にラッカー処理を施した、38.5mm径のケースを持つモデルが目を引いた。

ウルバン・ヤーゲンセン Ref.1140 RG Brown(限定20本)490万円
ウルバン・ヤーゲンセン Ref.1140 RG Brown(限定20本)490万円

「ウルバン・ヤーゲンセン」の歴史も古い。海洋国デンマークにおいて18世紀後半に、初代のヤーゲン・ヤーゲンセンが時計工房を創立。そして二代目のウルバン・ヤーゲンセンがそのあとを継ぎ、イギリス、フランスを時計修行の旅に出、パリではブレゲの工房において修行を積み、その後はコペンハーゲンに戻り、そこで高精度のマリン・クロノメーターや、ポケットウォッチを製造し、デンマーク王国御用達の時計工房となったのだ。

その後スイスのルロックルに拠点を移したヤーゲンセンファミリーは、四代にわたり、素晴らしい時計を製作した。そして20世紀の戦後にアメリカ市場など向けの腕時計を作るうち、クォーツショックの時代に、ひとたびは休眠状態になってしまった。

しかしその素晴らしい歴史と、残された名品を復興させたいと、ピーター・ボームベルガーという、時計師であり、時計コレクターによって再び息を吹き込まれ、以来少量生産のコレクター向けと言える腕時計や、ポケットウォッチを製造してきた。凝りに凝ったギヨシェ文字盤や、製造に一年以上もかかるグランフー文字盤を与えられたその時計は、スイス高級時計の中でも特別に手のかかったものとして知られる。

Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN'S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。バーゼル101年の歴史の3割を実際に取材してきたジャーナリストはそうはいない。



撮影/小澤達也、三島勤也 文/松山 猛

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